「診察室」 長尾 知哉
2019年07月08日

 いつもの曜日のいつもの時間です。今日は好きなバンドの話、勉強の話、バイトの話などなど、なにを聞こうか話そうか、もちろんあなたの体調はいつも気がかりです。

 いつもなら診察室のドアを3回ノックして入ってきてくれるのですが、その日は体調が悪くて来られないと聞きました。少し心配です。

 あなたが最初に診察室に来た日も3回ノックだったのでしょうか?かなりつらそうに入ってきたのは覚えています。あの日から5年あまりの日が経ちました。

 がんを乗り越えていくことは大変だったでしょうが、ほんとうにあなたは頑張ってくれたと思います。あなたの周りにはさまざまな病院内外を問わず、北海道を越えて多くのプロフェッショナルが集まってくれました。あなたは私とこれらの人々をつないでくれました。

 いっしょにがんと闘い、乗り越えて生きていくこと。あなたが生きる毎日は治療に携わる私たちも含め大きなチャレンジであり、冒険であり、夢でした。いっしょに喜び、いっしょに悩んだ日々でした。なかなかうまくいかないことが多くてごめんなさい。

 さよならは言いません。「たぶんまた来るよ」と思っています。いつもの曜日のいつもの時間に外来にいます。予約なんて要りません。ドアを3回ノックしてくれればあなただとわかります。

 あなたの主治医はこれからも、いつまでも私なのですから。

投稿者外科・乳腺外科医長 長尾 知哉