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- 「大人の階段」 H.Y.
みなさん、こんにちは。
9月に入り、北海道らしからぬ蒸し暑い夏も終わりを迎えました。
寝苦しい夜も、いざ去ってしまうと、寂しく感じるのは私だけでしょうか...。
さて、長く続いたコロナ禍も世の中的は落ち着き、今年は魅力的な夏イベントが再開されていましたね(我々医療従事者は、まだまだ油断していません)。
今年のお盆は、野外フェスやビアガーデンを横目に、お墓参りのために実家に帰省しました。その時の思い出を少しだけお話しします。
実家には弟家族も帰ってきており、3人兄弟のパワフルな甥っ子たちが迫ってきます。
ただ、昔から子供と遊ぶのが苦手な私は、今までは部屋に逃げ込んだり一人で出かけたり、「伯父さん」の役目を果たしてきませんでしたが、すっかり大きくなった甥っ子たちから、今年は逃げ切ることができませんでした。
夜、しっぽりビールを飲んでいると、長男の6歳の甥っ子がオセロで勝負をしかけてきました。
オセロなんて10年以上やった記憶がない。
でも、子供と遊ぶのは苦手でも、ルールが確立され、勝敗が決まれば終わりを迎えられるオセロなら受けてもやってもいいだろうと、3回戦の勝負を受けました。
1戦目、いざ勝負。............私は負けました。6歳の甥っ子からは、「初めて勝った、なんで弱いの?」と言われる始末。
しかし私は33歳、過去の失敗を成功に繋げるノウハウを身につけています。2戦目は勝利しました。
「大人を本気にさせると、怖いよ?」
決めセリフもいい感じに刺さったようです。
そして運命の3戦目。
私は今年、テニスの大会で2回優勝した実績と自信があります。
種目が違っても、土壇場では有利に試合をすすめることができるでしょう。
決着をつけるべくスタートした3戦目も中盤まで進み、自軍(白)が敵軍(黒)を囲うような陣形をとっています。
勝負が進むと酒も進み、ほろ酔いから酩酊状態に変わりつつありましたが、勝ちを確信して最後の決めセリフを悩み始めたころ、事件は起きました。
敗戦ムードで長考していた6歳の甥っ子が、手に持っていたオセロ石を盤の上に落とした。すぐに拾い上げ、乱れた盤上のオセロ石を整えた。いや、整えるように見せかけて、敵軍(黒)を囲んでいた自軍(白)のひとつを黒に反転させていた...!
実は、その前にも「あれ?ここ黒だっけ?」と思う節があった。私は酔っていたので確信を持てずにいたが、疑いが事実になった瞬間であった。
私は冷静に「今、裏返したよね?これで2回目だね?」と諭すと、なんでばれたんだよぉと、6歳の甥っ子はかわいい悲鳴を上げた。
そして、そのまま試合は私の圧勝に終わり、『正義は必ず勝つ』という社会の掟を教える形で、甥っ子との戦いに幕を下ろした。
スポーツマンの私は、ルールの中で競い合うことに喜びを感じてきた。なので、甥っ子が6歳から反則技を身に着けていたことに驚きと怒りを感じたが、同時に成長を感じました。オムツを履いて走り回っていた「子供」の甥っ子はもう存在せず、小学校に入学し社会の荒波に揉まれ、時にはどんな手を使ってでも乗り越える方法として、反則技を身に着けたのだろう。甥っ子は「大人」になろうともがいているのだ。
すでに終戦後のリビングには甥っ子の姿はなく、ひとりぼっちになった私は、感傷と悦びに浸りながら残りの酒を飲み干して就寝しました。
以上、夏の思い出でした。ご精読ありがとうございました。