「飲酒と依存症」 後藤 誠
2024年04月22日

九州にいたころ、インシュリンの自己注射をしていた糖尿病の患者さんがいました。善良ですが、大量飲酒者でアルコール依存症の人です。九州ではそういう人をポタトール(potator)と呼んでいました。北海道ではあまり聞いたことがありません。ポタトールはドイツ語だと思っていましたが、ラテン語 らしいです。彼はお酒で肝臓も膵臓もボロボロという感じでした。特に膵臓は膵石を伴い萎縮していました。飲酒によって慢性膵炎となり、インスリンが膵臓で充分作れなくなり糖尿病になったと思われました。

入退院を繰り返していましたが、ある時一念発起してお酒をやめました。彼の家はキリスト教で、教会の断酒会に入り、その後そのリーダーになりました。各地を回って指導したり、講演したりしていました。断酒会のリーダーとして外国にも行ったりするようになり、ローマ法王にも会ったとかで、生き生きとしていました。断酒して数年たち、もうこれで大丈夫だろうと思っていました。

ある日、暗い顔をして外来を受診しました。また飲酒するようになったというのです。とても暑い日に墓参りに行って、大量に汗をかき喉がからからに乾いていました。ちょうどその時、墓にお供え物としてカップ入りのお酒が置いてあり、つい飲んでしまったというのです。いったん飲んだら、飲酒が止まらなくなったそうです。恥ずかしくて断酒会にも顔を出せなくなり悩んでいました。たった1回の失敗で自分を責め過ぎないようになどと話したのですが、根がまじめなだけにつらいようでした。

その後、彼は意識障害のため救急車で運ばれてきました。低血糖でした。当時はペン型の注射器はなく、バイアルから注射器で吸って打っていましたから間違えたりして大量に打つこともありえました。

命に別状はなかったのですが、意識は回復しませんでした。寝たきりになった彼を見るたび、あの時、もっと親身になって話していればなどと後悔していました。

sIMG_9854_5_6_tonemapped-Edit.jpg桜と犬.JPG

投稿者内科医師 後藤 誠
「推し活」 小野寺 麻記子
2024年04月08日

 「推し」とは-深い愛着があり他の方にもお勧めしたいと思う人物や物を指す表現とされている。現代用語として定着し、いまでは「○○推し」「推し○○」など何にでもつけれる汎用性の高いパワーワードとなっているが、社会問題ともなっている過度な推し活には不安感を覚えることもある。

それでも、「推し」が日々の生活を彩り、もたらされるハッピーな効果がいかに大きいかは想像に難くない。最近では、生活にハリや刺激を与えるという観点から、認知症やフレイルの予防などにもつなげていく自治体の取り組みもあるほどだ。

 私はあまりものごとへの執着がないので「○○好き」はあっても「推し」はないと思っていたが、ひょんなことから先日、私にもれっきとした「推し」がいたことが判明したのである。

彼女との出会いは数年前、コロナ禍で外出制限があった頃だった。自宅で過ごす時間が増えストレスも溜まりやすくなっていたので、当時流行し始めていた自宅エクササイズをやろうと一念発起して宅トレクリエイター竹脇まりな氏のYouTube動画を見ながら宅トレを開始。これまでダイエット目的で何度かエクササイズを試みたことはあってもほぼ三日坊主で、健康グッズも買いあさってはすぐに飽きて放置している状態。毎年健康診断の問診票に「1ヶ月以内に運動をはじめようと思っている」をチェックし続ける、いわゆるやるやる詐欺状態の私。どうせ3日でやめるだろう...と(自分を含め)家族のだれもが思っていた-

それがなんと! 1年以上も続いた奇跡!!

彼女の動画は映え要素に重きを置かず等身大で飾り気がない。そして常に明るく前向きで、くったくのない笑顔を向けてくれる。今の自分のまま、好きなやり方でできることだけでもいい、一緒に頑張ろう!とテロップで励まされ、お手本と同じ動きにはこだわらず、上手にできなくてもかっこわるくても自分がやれる・やりたい動きを全力でやる。ここキツーいっ!!というところでタイミングよくテロップが入る(『ギャー』『きつー』『昇天★』『きついけど楽ちい~』など(笑))。一緒にもだえながらもあっという間に時が流れていくのである。いつしか私はダイエットや健康のために運動を続けるということを抜きにして、ただ彼女と画面を通してコミュニケーションをとるために1年間エクササイズを続けていた。トレーニング系YouTube動画は数多く配信されているので、他にも試してみても不思議と続かなくて、彼女だけが(運動時の)私の気分を上げてくれる特別な存在で、まぎれもない「推し」だったのだ。そして、何と言うことでしょう!楽しく推しと運動をして、腸活レシピをいるうちに、7kgほど痩せて体も軽くなっていた。あぁすばらしきかな、推し活!

 そしてウィズコロナからアフターコロナへと変遷する中で、私の体調(体型)も変化していった...肘の手術をしたり、四十肩をこじらせたり、ヘルニアでの腰痛などで苦しみ、リハビリに通うこと1年以上。トレーニングはなかなかできず気分はみるみる落ち込み、逆に体重とストレスはみるみる増えていった。先日1年ぶりに受けた健康診断では「腹囲がちょっと...去年とだいぶ変わっていて。はかり間違えかもしれないのでもう一度はかりますか?」と言われ、うなだれながら小さく「いいえ...はかり間違えではないと思います」と応えた自分の脳裏には久しぶりに彼女の笑顔が浮かんでいた。

そうだ!また推し活を始めよう。

投稿者歯科口腔外科部長 小野寺 麻記子
「整形外科医の独り言」 黒部 恭啓
2024年04月01日

 卒業して北大整形外科に入局しました。 

当時は、臨床研修もなくそのままストレートに整形外科の研修がはじまった。

大学病院では、下肢班、股関節班、脊柱班、上司班の研修を行いました。

その後は比較的大きな病院で研修を行いました。卒後5年時に下肢班に属しました。

それなりの技術を習得し、比較的大きな市中病院に勤めることになりました。。

各班(脊椎・上司・下肢)とそろっており、専門分野の手術を担当していました。

20034月、当時、社会保険総合病に赴任しました。研修医も含め、5人の体制でした。

このころから、公的病院の人手不足が気になるようになってきました。

2年が過ぎた頃から人数が減少し、研修医との二人体制となり、最後は一人になりました。一人でできる手術だけとなり、院長からも売り上げの減少を言われるようなっていました。

大学からの意向もあり、20144月に苫小牧市立病院に移動しました。ここも二人体制で、週2日の研修医の応援、外来派遣などでしのいでいました。病気のため上司が辞め、一人になりました。札幌から近場の苫小牧も科によっては人手不足になっています。

今回は、家庭の事情もあり、2021年4月に当院に入職しました。高齢化の波は逆らえませんが、専門性をもって働いています。

追伸

 年20回程度ゴルフを行っています。60歳を過ぎて、飛ばなくはなりましたが、その分曲がりも小さくなり、スコアもまとまってきました。

投稿者整形外科部長 黒部 恭啓
「札幌でサンピラー」 折居 史佳
2024年03月25日

リレーエッセイの順番は、年のはじめころに1年分が発表になります。先日ローテーション表が配られ、「今年の私の順番は〜」と、表を見たところ、なんと3番目!すぐではないですか!これでは取材に行く時間がございません!

ということで、少し前の話ですが、たまたま目撃した自然現象について書かせていただきます。

20241月中旬のある朝のことでした。ふと太陽の方を見ますと、太陽の上の方に柱のようなものが見えるではありませんか。

サンピラーリレー.jpg

「これは、もしかしてサンピラー!? サンピラーって、すごく寒いところでみられるものなのでは?札幌でも見られるの?」と思い、後日ネット検索してみました。

「ウェザーニュース」から引用しますと、「サンピラーは日の出や日の入りの時、太陽から垂直に炎のような光芒が見られる現象です。光の柱のように見えることから、『太陽柱』とも呼ばれます。空気中に浮かぶ六角形の板状の氷の結晶に太陽の光が反射することで見られますが、氷の結晶の向きが揃っている事が条件となります。そのため、空気がよく冷えていて、上空の風が弱い時に空気中の氷の結晶が豊富で向きも揃いやすく、サンピラーが見られることがあります」とのことです。

私は旭川市の出身ですが、サンピラーといえば名寄、というイメージでした。サンピラーパーク、とか、温泉とか、昔は、サンピラーラーメン、なんていうのもあったような気がします。今回調べたところ、北海道各地でサンピラー目撃の報告があるようですね。この日の札幌はマイナス7度くらいでしたが、もっと寒いところでないと見られないと思っていましたので、ちょっと感激でした。神秘的というか、なんだか神々しい感じがしました。

投稿者IBDセンター部長 折居 史佳
「私と将棋」 涌井 之雄
2024年03月18日

 将棋に関心のある読者はどれ位の割合であろうか?

今、将棋が注目を浴びている。タイトルの全てを獲得して八冠を達成した藤井聡太の活躍が将棋を知らない人にも驚きと感動を与えている。藤井聡太の将棋は面白い。プロの棋士でもAI(コンピューター)と対戦すればかなわないが、トッププロでも驚くAIに近い手を指すことがあり神の手とも表現されることが多い。1988年18歳で名人経験者4人を破り、NHK杯で優勝した羽生善治九段の登場と似たワクワク感がある。199625歳で羽生は七冠を達成するが藤井はまだ22歳である。今後の活躍に期待するとともに私は将棋アプリで藤井の棋戦を中心にリアルタイムで楽しんでいきたい。言い過ぎかもしれないが、野球界の大谷翔平と同様に同時代を生きていることに幸せを感じる。

 レベルは違えども私はというと小学生で将棋を覚え、年上のいとこと将棋に熱中した楽しい時期を記憶している。勝ち負けに目先がいき、定跡を覚えるのが苦手では強くなるはずがない。それでも詰め将棋は得意な方で劣勢を挽回して勝利した時の喜びはひとしおである。かといって、将棋の大会に参加したことはなく、インターネットでお酒を飲みながらレーティング上位者と対戦しては負けることが多くなかなかレーティングも上がらなかった。縁があって、40代の時に北海道新聞の夕刊に連載されたプロ棋士との駒落ち戦に参加する機会に恵まれた。深浦康市九段との飛車角2枚落ちの手合いであった。当時苦手な駒落ち定跡もそれなりに勉強して実践に望んだのだがいいところなく完敗してしまった。現在は自宅のパソコンで将棋ソフト"激指"で仮想女流棋士と飛車落ち将棋を楽しんでいるがほとんど負けることが多い。

PS いまだに海水魚飼育は続けています。現在は、トロロ藻というものが繁殖し撃退に手こずっています。

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投稿者産婦人科部長 涌井 之雄
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