NST便り 10月号
2019年10月04日

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―「微量元素」について―

【微量元素とは】

人間が食事として摂取する栄養素には、三大栄養素である糖質(炭水化物)、たんぱく質、脂質、のほか、ビタミン、ミネラルがあります。

ミネラルには体内に比較的多く存在する多量ミネラル(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン)のほか、体内量の少ない微量ミネラル(=微量元素)が含まれます。微量元素には、鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデンがあります。

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この微量元素は、体内量は少ないですが、体のさまざまな調節機能の役割を負っています。微量元素には体内蓄積もあるため、なんらかの理由で食事がとれなくなってもすぐには欠乏による症状は現れませんが、絶食が長期にわたると欠乏による症状が現れます。逆に、補充薬剤やサプリメントの不適切な利用により過剰摂取となって健康障害を起こすこともあります。

今回はこのうち、鉄、亜鉛、銅、セレンについて触れたいと思います。

【鉄】 鉄は赤血球を構成し、その欠乏は鉄欠乏性貧血、運動機能、認知機能の低下をきたします。一日必要量は成人男性で6.0〜6.5mg、女性は月経による喪失があるため、8.5〜9.0mgとなります(妊婦・小児は別に設定)。補充には、内服薬・静注用製剤・サプリメントなどが用いられます。

【亜鉛】 亜鉛はたんぱく質との結合により体内のさまざまな調節作用を発揮します。欠乏症状も多岐にわたり、皮膚炎、味覚障害、創傷治癒遅延などがあります。2017年3月から低亜鉛血症に対して内服薬(ノベルジンⓇ)の使用が可能となりました。

【銅】 銅は10種類もの酵素に結合し、エネルギー生成や鉄代謝、神経伝達物質の生成、活性酸素除去などに関わっています。おもな欠乏症状は血球減少、貧血、成長障害、心血管系および神経系の障害などです。銅の内服薬はありませんが、多くの経腸栄養剤は銅(+鉄・亜鉛)を含んだものになっています。

【セレン】 セレンはたんぱく質と結合し抗酸化システムや甲状腺ホルモン代謝を調節します。長期絶食によりセレン欠乏になると心筋傷害や歩行困難などをきたすことがあります。日本にはこれまでセレンを補充する経腸栄養剤はあったのですが、静注製剤はありませんでした。しかし、2019年6月に日本初のセレン静注用製剤であるアセレンド注Ⓡが発売されました。

上記の微量元素の欠乏症は、頻度は低いですがNSTで関わらせて頂く入院患者様でもおこることがあり、その改善をきっかけに栄養状態の改善がみられることがあるため、NSTとしても常に念頭に置いて活動を行っています。

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〈参考資料:日本人の食事摂取基準2015年版 第一出版〉

投稿者IBDセンター医師 折居史佳
NST便り2019.9月号
2019年09月04日

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NST委員会では1年に数回の勉強会を開催しております。

本年7月下旬には、毎年開催しているNST委員会・栄養管理委員会合同の『病院食の形態(一般食・特別食)と機能性付加食品』というテーマで病院食の試食会を兼ねた勉強会を実施させて頂きました。  

合計37名の職員が参加しましたが、医師、看護師、薬剤師、理学療法士など、普段あまり調理に関係のない職種の方々にも参加して頂き、たくさんの質問が飛び交うなか活発な勉強会となりました。

今回の勉強会の目的は、職員の皆様に患者さまと同じ食事を食べてもらうこと。「常食」・「EC食」・「PC食」・「IBD食」などの食種と、「一口大」・「きざみ」・「ミキサー」などの食形態を体験して頂くことでした。そして普段口にすることの少ない「エンジョイクリミール®」「エンジョイゼリー®」など付加食品や「MAラクフィア®」「ラコール®」などの経管・経腸栄養剤も実際に試食・試飲して頂くことのできるイベントとなっていました。

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当日はアンケートも取らせて頂きましたが「凄く勉強になりました」などのうれしい回答を頂くことが出来ました。

NST委員会では今後も様々な勉強会を予定しております。9月は「NSTについて」というテーマで、折井医師の勉強会を開催予定です。ご興味のある方はぜひご参加下さい。

投稿者:管理栄養士 北村雄治
NST便り2019.7月号
2019年07月05日

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みなさん、こんにちは

4月2728日の2日間にわたり、愛知県名古屋市で『人生100年時代の口腔ケア』という大会テーマで、第16回日本口腔ケア学会総会・学術大会が行われました。

この大会は、病院や施設、在宅療養などのあらゆる場面において、様々な病気や治療、日々のケアとその関わりの中での学びや経験を発表し合い、学び合う場でもあります。

今回は、この学会に参加し学んできたことをもとに、みなさんに紹介させていただきたいと思います。

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「口腔ケア」は、言葉の通り、お口のケアのことですが、口の機能は様々で、呼吸をする、食べ物や飲み物を取り入れ咀嚼する、話をするなどたくさんの役割があります。

そして、その機能は、虫歯や歯周病をはじめ、肺炎や誤嚥性肺炎、糖尿病、心筋梗塞などの病気と

深く関連しています。また、食べる、飲み込むといった、私たちが生きていく上で、最も大切な機能にも影響していきます。

高齢社会が進む中、病院や施設、在宅療養をされている方の中にも、自分の力ではできず、ケアのお手伝いを必要とする方が多くいらっしゃいます。この大会のテーマにあるように、『人生100年時代』は間近に迫っています。口腔ケアを通じ、ケアを必要とされる方にどんなケアが提供できるのか、またその方法、実際の患者様の声を聴くなど、多くのことを学ばせていただきました。

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健康なお口をいつまでも維持していけるよう、みなさんにも日々のケアの大切さを知っていただけたらと感じました。

投稿者ICU看護師 髙橋美和子
NST便り2019.4月号
2019年06月13日

『嚥下障害の基礎、食事介助方法』

<嚥下のメカニズム>
Ⅰ.先行期   :食物を形や匂いを認識する。
Ⅱ.口腔準備期 :口に取り込み、噛んでまとめる。
Ⅲ.口腔期   :食物を喉に送り込む。
Ⅳ.咽頭期   :食物が喉を通る
Ⅴ.食道期   :食物が食道を通る。
以上5段階から構成されています。

<嚥下障害と誤嚥>
食べ物を上手に飲み込めない状態のことをいい、主な原因として、形態的な異常(口蓋裂等の先天的な異常、歯の欠損や口腔、喉などの手術等の後天的な異常)や神経・筋系の異常(発達障害や脳血管障害、パーキンソン病などの神経変性疾患等)、他にも加齢に伴う機能低下、認知症等があります。
『誤嚥』というのはこれらの原因により、気管に異物が入ることをいいます。「むせが有る誤嚥」と「むせが無い誤嚥」の2パターンがあり、いずれも誤嚥性肺炎の要因となっています。

<嚥下の評価方法>
嚥下の評価は、①認知機能  ②身体機能  ③口腔器官機能  ④嚥下機能などで行います。
一般的な検査方法として、①反復唾液飲み検査  ②改定水飲み検査  ③食物テストがあり、より専門的な方法として嚥下造影検査と呼ばれるものもあります。

<食事形態について>
食事を摂取しやすくするために、嚥下学会では食事の形態を細かく分類(2013)しています。
当院では患者様の嚥下機能に応じて、主食は米飯~ゼリー粥、副食は常食~ミキサー食にとろみや練り梅などを付加して提供しています。

<水分のとろみについて>
嚥下機能が低下している場合は水分でむせる人が多いため、とろみをつけることで「むせ」を減らすことが出来ます。嚥下機能に応じて適切なとろみの濃度に違いがあり、「薄い」、「中間」、「濃い」という学会分類が存在します。

<食事介助方法>
安全に食事を摂取するための代表的な方法を以下に掲載します。

●食事前
①口腔ケア :誤嚥性肺炎の予防、口腔器官機能の維持、全身状態の維持。
②環境設定 :食事に集中できる環境設定をする。
③姿勢設定 :嚥下機能が低下している場合、ベッドの角度を30、45、60度と調整することで誤嚥のリスクを下げることが出来ます。

●食事中
①何を食べているのか知らせる :食物をしっかり認識させ、体に食べる準備をさせる。
②一口量を調整する      :多すぎると誤嚥のリスクが高まる。
③食べるペースを整える    :食事時間は早くても遅すぎても誤嚥リスクが高まる。 1食につき30分が目安。
④飲み込む前に話かけない

●食後
①内服  :錠剤は口の中に残りやすい。
       薬が飲みづらい場合は薬を粉砕することや、とろみ水やゼリーを使用して飲むとよい。
②口腔ケア:食物が口の中に残留してしまっていることがある。
      そのまま放置すると誤嚥につながるため、食後にしっかり取り除く。
③胃食道逆流の防止:食後すぐに横になってしまうと胃から食物が上がってきやすい。
          食後1時間以上は座っていた方が良い。

<口腔、咽頭残留への対応>
食事中に喉がゴロゴロなることがありますが、これは食物を完全に飲み込むことが出来ておらず、喉に残留している状態です。咳払いや、追加で唾を飲み込むなど喉をすっきりさせてから、食事を再開する必要があります。

<食事中止のタイミング>
①たくさんむせる。
②飲み込む速度が遅くなる。
③SpO2が一気に3%以上低下し、呼吸状態が悪化する。
これだけではないが、大事なことは危ないと感じたら無理に食べさせないことです。

食事は人生の楽しみの1つですが、誤嚥や窒息などの危険を伴うものです。
これを機会に嚥下について関心を持って頂ければ幸いです。食事で気づいたことがあれば言語聴覚士までご相談下さい。

投稿者言語聴覚士 稲井宏則
NST便り2019.2月号
2019年06月12日

【 NSTの流れ その2〜栄養の組み立て〜 】
2018年10月のNST便りで、NST活動における「栄養評価」について書きました。今回は、その続きとして「栄養の組み立て」についてお話ししようと思います。
「栄養評価」で入院された患者様の栄養状態がよいのか悪いのかが分かったら、次には栄養状態を改善するように「栄養の組み立て」を行います。

【 1日の必要栄養量の算定 】
健康な日本人が1日に摂るべき栄養量は、厚生労働省が「日本人の食事摂取基準(2015年版)」で発表しています。

このなかで、健康人における1日に必要なエネルギーの量(総エネルギー消費量)は、基礎代謝量(覚醒状態で必要な最小限のエネルギー)×身体活動レベル(活動係数:体を動かす激しさの程度)とされています。例えば、座り仕事の場合の身体活動レベルは1.75程度、立ち仕事の場合は2.0です。
しかし、入院中の患者様の場合はこれに加えて、「病気であることで消耗するエネルギー量」を考慮しなければなりません。
すなわち、1日に必要なエネルギーの量(総エネルギー消費量)は、基礎代謝量×身体活動レベル×ストレス係数(患者様がかかっている病気がどの程度エネルギーを消耗するものなのかを示す指数)で決定されます。たとえば、がんの患者様のストレス係数は1.1〜1.3、感染症の患者様だと1.2〜1.5といわれています。
このように、1日に必要なエネルギー量を計算するのですが、基礎代謝量を実際に計測するには大がかりな装置が必要となり、病院内でそれを測定することができないので、NST活動では年齢、性別、身長、体重などから必要エネルギー量を推定することが行われています。代表的な推定式は、1919年に発表されたHarris-Benedictの式などです。

【 必要エネルギー量の各栄養素への割り振り 】
1日に必要なエネルギー量(総エネルギー消費量)が決定したら、次にそれを各栄養素に割り振り、食事や栄養剤、点滴の内容を決めていきます。
各栄養素の割り振りは一般に以下の順番で行います。

1) たんぱく質:たんぱく質は筋肉や内臓など体の組織を構成する物質で、人体にはなくてはならないものです。健康な人の場合の1日に必要なたんぱく質の量は体重1kgあたり0.8〜1.0gといわれていますが、身体的ストレス(ストレス係数)が高いほど、より多くのたんぱく質が必要となると言われています。従って、患者様のかかっている病気にあわせてたんぱく質の量を決めていきます。
2) 脂質:脂質は健康人では摂りすぎると冠動脈疾患(心筋梗塞など)の危険が増しますが、脂質自体は、各栄養のなかで一番のエネルギー源であり、細胞膜の構成成分であるという重要な役割があります。脂質の目標摂取量は総エネルギー消費量の25%前後といわれています。
3) 炭水化物:炭水化物は最も重要なエネルギー源といわれ、とくに、脳、神経、赤血球、腎尿細管、精巣などはぶどう糖しかエネルギー源として使用できません。炭水化物はこれらの組織へのエネルギー供給源となります。炭水化物(糖質)の摂取量は総エネルギー消費量のおよそ50〜65%とされています。

また栄養素とは異なりますが、1日に摂取する水分量も決めていきます。
4) 水分量:およそ、現在の体重(kg)×25〜30mlといわれています。心臓病、腎臓病のある患者様はこれより少なくなる場合があります。

当院NSTでは、このように決定した栄養量を患者様が満たしていけるよう活動を行って参ります。

参考資料:認定NSTガイドブック2017 南江堂
厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2015年版)

投稿者IBDセンター医師 折居 史佳
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