「ハードルが高すぎて...?」 成田 光生
2024年08月19日

 日本選手が頑張ってメダル量産となったパリオリンピックも終了したが,今大会は金メダル種目以外でも近代5種や高飛込みで日本史上初のメダル獲得など,注目された競技が多かった.さらにメダルには届かなかったが賞賛された選手として,男子110m障害で陸上競技短距離種目で日本史上最高の5位入賞を果たした村竹ラシッド選手が挙げられる.

 さて障害走というと全員がハードルを「飛び越えて」いるが,実は陸上競技規則には「ハードルは飛び越えなければいけない」とは一言も書かれていないそうである.もしパワーに絶対の自信があるなら,'うぉぉりゃあ!'とばかりにハードルを次々なぎ倒して走ってもよいのだが,どうやらその走法では飛び越えるより速くは走れないようである.

 よく「ハードルが高すぎて...」などと言われるが,簡単にあきらめる前に,「高いハードルなら下をくぐってみたらどうだろう」などと,発想の転換をしてみては?

投稿者小児感染症部長 成田 光生
「ペトロナスツインタワー」 城田 誠
2024年08月13日

この世に新型コロナ感染症が出てくる前は毎年のように海外旅行に出かけていたがコロナ禍となってからはとても無理だった。

まだ新型コロナ感染症は頻発しているものの以前ほど重症となる確率は減り、日本にもインバウンドで多くの海外からの旅行者が来ている。

ということで数年ぶりに海外旅行を計画し、マレーシアのクアラルンプールとマラッカに出かけた。

もう10年以上前から、なぜだかクアラルンプールのペトロナスツインタワーというツインビルにひかれていて、ずっと見てみたいと思っていた。高さ452m88階建で1996年の建設当時は世界一の高層ビルであった。その後他国にもっと高いビルがいくつも建設されたが、ツインタワーとしては現在も世界一らしい。

写真の右側のビルを日本の建設会社が、左側のビルを韓国の建設会社が建てたらしい。

城田先生.png

圧巻でした。素晴らしい。大満足。

投稿者外科部長 城田 誠
「27年ぶりの映画館:ゴジラ-1.0」岡 敏明
2024年08月05日

 昨年末、27年ぶりに映画館に行き、ゴジラ-1.0を観ました(内科のA先生に勧められて)。久しぶりなので、チケットの買い方もわからず、戸惑いましたが、係のお兄さんからチケット購入方法を教えてもらいました(高齢者割引で、意外と安かった)。

 映画自体は、すごく良くて、ゴジラ映画ですが、泣けました。核の脅威や戦争、暴力や災害、感染症など、ひどいことが続いていますが、ゴジラはそれらの不条理を背負っているようだ、と思いました。サブタイトルは、「生きて抗え」。

 神木隆之介さん、浜辺美波さん演じる人間ドラマも、良かったと思いました。

 更に今年に入り、再度、同じ映画を見に映画館に行きました。また7月にはWOWWOWでも放映され、それも家人と一緒に見ました。3回目ですが、やはり泣けました。(多すぎですね)

 ただ奥さんは家族ドラマの部分は感心しない。が、ゴジラは可愛くて良かった、と言っていました。

 受け止め方は、本当に人それぞれ、ですね。これからの暑い日々、映画館でひと時を過ごすのも、良いかもしれませんね。

投稿者小児科/血友病センター臨床顧問  岡 敏明
「最初の患者さん」 岡野 聡美
2024年07月08日

 リレーエッセー初登場の岡野聡美です。昨年春から当院に勤務しています。私は社会人を経験後、医学部に入学し医師になりました。今回は学生時代の話にお付き合い下さい。

 解剖学実習は御遺体にメスを入れさせて頂き、人体構造を三次元で学ぶ医学部ならではの実習です。「自分が亡き後、遺体を医学・歯学教育や研究のために役立ててほしい」という尊い志を持った方達が、生前大学の白菊会という組織に登録し、死後御遺体をお預かりする献体という制度によって実習が成り立っています。

 「目の前の御遺体は、あなた達の最初の患者さんです」。解剖学実習の初日、教官は緊張して臨んだ私達にまずそう告げました。とは言うものの、学生には御遺体の名前すら知らされません。私達4人グループが担当する御遺体の覆いをそっと外すと、そこに横たわっていたのは、小柄な50代半ばの男性でした。瘦せていて腹部には胃まで貫通する小さな穴が開いていました。他の御遺体は高齢の方が殆どの中、まだ若いのに何故・・・と私達は顔を見合わせました。しかし限られた実習時間の中、躊躇している暇はありません。ホルマリンの匂いが充満する部屋で、数か月間必死に実習に取り組みました。初めて使うメスで皮膚をはがし、筋肉をわけて細かい神経の走行まで確認し、内臓を全て取り外し、骨も一つ一つバラバラにして、座学で学んだ知識を確かめさせていただきました。

最後の実習は納棺でした。大切に保管してあった御遺体の組織を一つ残らず私達学生の手でそれぞれの御棺に納め、その後火葬され遺骨が御遺族に返却されます。閉じられた御棺の蓋には「A様」とフルネームが書かれていました。ようやく、生きていた証を少しだけ知ることができました。

 秋に献体をして下さった方々を弔う合同慰霊祭が行われました。実習で担当させて頂いたAさんの御遺族が名前を呼ばれ、焼香に立つのをドキドキしながら注目していました。祭壇に進んだのは、優しそうな50代と20代くらいの女性でした。すらりとした若い女性は、Aさんに似ています。Aさんの奥さんと娘さんでしょうか。慰霊祭が終わった道すがら、私は解剖学実習のお礼を言いたい衝動を抑え切れず、Aさんの御遺族を追いかけ思い切って声をかけました。御遺族は、Aさんの妹さんとその娘さんでした。Aさんは腕利きの家具職人で生涯独身だったこと、女手一つで妹さんが育てていた姪御さんを実の娘のように可愛がっていたこと、筋ジストロフィーを発症して全身の筋力が低下し、最後は腹部に穴をあけ胃瘻から流動食を摂り人工呼吸器を装着していたこと、「こんな自分でも最後に何か社会の役に立ちたい」と献体を申し出たこと等々、生前のAさんのことをたくさん話して下さいました。そして「兄はとても立派な社会貢献ができたんですね。ありがとうございます。私も亡くなったら是非献体しようと思います」と晴れ晴れとした笑顔で私にお礼を述べられたのです。隣にいた姪御さんの笑顔がAさんと重なりました。名もなき御遺体だったAさんが、人生を全うして本物の私の最初の患者さんとなった瞬間でした。あれから四半世紀経った今でも、たくさんのことを教えてくれたAさんが「努力を怠っていないか」と、初心に立ち返るよう見守ってくれていると信じています。

投稿者小児科医長 岡野 聡美
「ADA」 荒木 真
2024年07月01日

2024年のADAが終わりました。今年の目玉の一つとして、高血糖緊急症(DKA、HHS)のガイドラインが15年ぶりに刷新されました。とうとうβヒドロキシ酪酸が診断基準に取り入れられたのです。「DKAの診断上の重要な特徴は、循環総ケトン体濃度の上昇であり、特にβヒドロキシ酪酸の直接測定が推奨される」と新しいガイドラインは述べています。従来の尿中ケトン体検査では、DKAの初期にはケトン血症の重症度が過小評価され、逆に後期には過大評価されることがあるため、この変更は画期的です。

糖尿病だけでなく、心臓や腎臓にも使われるようになったSGLT2阻害剤は今後も処方量が増加すると見込まれています。そのような中で、特に「血糖値の高くないDKA」の簡便な診断が求められています。3年前、βヒドロキシ酪酸のpoint of care testingを導入するか検討した際、赤字になるかもしれない検査なのにもかかわらず、検査部の方々が積極的に導入に動いてくれました。今では救急でも頻繁にβヒドロキシ酪酸の迅速検査が行われるようになり、DKAの早期発見が可能となりました。スタッフのこうした取り組みは患者さんには見えにくいものですが、その仕事が医療現場での日々の診療に大きな違いを生み出していると実感します。

投稿者腎臓内科主任部長 荒木 真