甲状腺疾患に対する手術は、首の中央に10cm程度の皮膚切開をして行うのが一般的です。しかしながら甲状腺の病気は女性に多く、首の常に見える場所に残る手術の傷は美容上切実な問題となることがあります。そこで当科では、首に傷を残さない甲状腺内視鏡手術(Video-assisted neck surgery, VANS法)を導入しています。これは、開襟のシャツで隠れる鎖骨の直下に2.5cm程度の皺に沿った皮膚切開を行い、首には内視鏡を挿入する5mmのわずかな切開だけを作成します。この切開部位より皮膚を器械で持ち上げ、主に高周波凝固切開装置を用いてハイビジョンモニタ下で行っております。当院では平成28年度の甲状腺内視鏡手術の保険収載時から当術式をスタートして以来、国内でも指折りの症例数を維持しているため、現在まで40を越える日本全国の大学病院や基幹病院より当術式の習得を希望する医師を受け入れております。さらには、患者様にメリットが多い当術式のニーズの高まりも受け、この度内視鏡サージセンター設立の運びとなりました。
当センターにおける甲状腺内視鏡手術の適応は、
- 長径80 mm程度までの良性結節性甲状腺腫
- 早期の乳頭癌でリンパ節転移が僅かなもの
- 甲状腺容量100 ml以下のバセドウ病
としております。センター長である片山昭公は現在まで約500例を経験しており、合併症の発生頻度は通常の外切開と同程度の頻度であるという安全性を確認しております。手術時間は片側の手術の場合で1時間から2時間程度であり、これは通常の手術より30分程度長い時間です。また入院期間は通常の甲状腺手術は術後1週間程度の入院期間ですが、内視鏡手術の場合はほぼ全例で術後3日目に退院可能です。
当院での内視鏡下甲状腺切除術につきましては、徳洲新聞2016年11月7日号にも詳しく紹介されております。
甲状腺内視鏡サージセンター センター長
片山 昭公
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