当院の心臓血管外科の特徴は、循環器内科、腎臓内科、放射線科およびその他の診療科との緊密な連携のもと、冠動脈疾患、弁膜症、大動脈疾患、末梢血管疾患、下肢静脈瘤 (日帰り手術など)、腎臓病の方のシャント作成あるいはシャントトラブルに対する対応などあらゆる後天性心疾患および血管疾患に対する最適な治療を選択できることにあります。
確実で安定した手術手技と治療成績の確立を目標に、よりよい外科治療を提供すべく研鑚していく所存です。
当科を受診したからといって必ず手術治療を行うわけではありません。手術治療が最適と決まっているわけでもありません。お気軽に外来を受診してください。
●冠動脈バイパス術(狭心症や心筋梗塞に対する手術)
狭心症や心筋梗塞後の治療として飲み薬による治療に限界がある場合、循環器内科医との検討により血管内治療(バルーンやステントによるカテーテルによる治療)を行うか、冠動脈バイパス術を行うか、患者様それぞれに最も適した治療法を選択します。
患者様や冠動脈の特徴によりグラフトは動脈グラフト(左右内胸動脈、橈骨動脈、胃大網動脈)、静脈グラフト(大伏在静脈)を適切に組み合わせて選択します。
また、人工心肺を使用するか、使用しないか(オフポンプバイパス、OPCAB)についても患者様それぞれに適した方法を患者様とともに選択します。
●弁膜症手術
心臓には僧帽弁、大動脈弁、三尖弁、肺動脈弁があります。主に手術対象になるのは僧帽弁、大動脈弁、三尖弁です。僧帽弁閉鎖不全症にはできるだけ弁形成術(自己弁温存)を行います。経皮的僧帽弁クリップ術(MitraClip)(カテーテルによる治療)が患者様にとって良いと判断した場合は、札幌東徳洲会病院あるいはご希望の実施医療機関にご紹介させていただきます。
僧帽弁狭窄症、大動脈弁狭窄症あるいは大動脈弁閉鎖不全症には、原則は置換術を施行します。大動脈弁狭窄症の患者様で経カテーテル大動脈弁植え込み術(TAVI)の適応と考えられる患者様は札幌東徳洲会病院あるいはご希望のTAVI実施医療機関にご紹介させていただきます。弁置換術における人工弁の選択は、患者様と相談の上、主に年齢により生体弁あるいは機械弁を使い分けます。三尖弁閉鎖不全症には主に弁輪形成術を施行します。心房細動合併例にはメイズ手術あるいは左心耳閉鎖術を弁手術と同時に行うことが多いです。心房細動単独の場合は通常、循環器内科でカテーテルによるアブレーション治療を行います。弁膜症手術では最近、創を小さく行ういわゆるMICS手術やロボット手術を行う施設が増えてきています。当科は、現時点では従来通りの胸骨正中切開での手術を行っています。
●大動脈瘤あるいは大動脈解離に対する手術
大動脈瘤は大動脈が太くなる疾患です。大動脈は太くなると破裂(出血)の危険性が高くなるためにある程度の大きさになると手術の危険性よりも破裂の危険性が高くなります。大動脈解離は大動脈の壁が裂けることにより、破裂の危険性が増大し、さらに、心臓、脳、腹部臓器、下肢などの臓器虚血の危険性が増大する状態です。場合によっては緊急手術が必要です。
大動脈瘤は薬では小さくなりません。手術が唯一の治療法です。胸部大動脈瘤手術は一般に人工心肺を使用します。腹部大動脈瘤手術は通常、人工心肺を使用しません。近年、より侵襲の少ないステントグラフト治療が普及してきています。ステントグラフトの場合、胸部大動脈瘤に対しても人工心肺を使用しなくて済みます。しかし、従来の手術の方がステントグラフトより優れている点も多いです。患者様の血管や瘤の位置および形状、年齢、体力、合併疾患などによりステントグラフトにするか、従来の手術にするかどうかを患者様と一緒に検討します。
胸部ステントグラフト治療が必要な患者様は札幌東徳洲会病院あるいはご希望の実施医療機関にご紹介させていただきます。
●下肢閉塞性動脈硬化症に対する手術
下肢閉塞性動脈硬化症に対する治療には運動療法、飲み薬による治療、血管内治療(カテーテルによるバルーン、ステントなど)、手術治療があります。循環器内科と相談の上、患者様の症状や病態、糖尿病や感染などの合併症の有無、病変の位置、狭窄の程度、長さなどにより最も適した治療法を選択します。
心臓血管外科では主に手術を担当します。手術には動脈の肥厚した内膜を切除する内膜摘除術(主に鼠径部)、自分の血管(主に下肢の大伏在静脈)や人工血管によるバイパス術などがあります。カテーテルによる治療と手術治療を組み合わせて行うこともあります。閉塞性動脈硬化症ではありませんが、心房細動などが原因で急激に下肢の動脈が閉塞した場合などは緊急に血栓摘除術を行うこともあります。下肢の血流が悪化した場合は、下腿や足に潰瘍ができていつまでも治らなかったり、感染したり、壊死したりすることがあります。場合によっては切断する必要が生じる場合もあります。皮膚の管理も非常に重要です。皮膚排泄ケア認定看護師を含むスキンケアチーム、形成外科などとも連携を取りながら集約的な治療を目指します。
●下肢静脈瘤手術
下肢静脈瘤治療には主にストッキングによる治療、硬化療法(注射による治療)、手術による治療があります。手術には従来からのストリッピング治療(大伏在静脈や小伏在静脈を抜去する)のほかに、レーザーや高周波治療、それに血管内塞栓術(グルー治療)があります。上記治療に加えて静脈瘤を切除したり、硬化療法で瘤をつぶすこともあります。
当院(外科あるいは当科)では、手術適応のある患者様には原則、日帰りによるレーザー治療を行います。抗血小板剤や抗凝固剤を内服している患者様もそれらの薬を止めずに行うことが多いです。複雑な症例にはストリッピング手術を施行する場合もありますし、入院して治療を行うこともあります。
静脈瘤のある方がすべて手術適応というわけではありません。弾性ストッキングによる治療のみを行う方もいらっしゃいます。心配な方や症状のある方はお気軽に受診してください。
●腎不全に対するシャント作成、シャントトラブルに対する手術
腎不全が悪化すると定期的に透析治療が必要になります。当院を含め、他院においても腎臓内科や泌尿器科などで透析が必要と判断された場合は新たに動脈と静脈を吻合するシャント作成手術が必要になります。稀ですが、長期留置型の透析用のカテーテルを挿入することもあります。当院では、腎臓内科あるいは当科でシャントを作成します。シャントは、透析期間中に閉塞や狭窄などのトラブルを生じることも多いです。その場合は、血栓摘除術、血管拡張術、新たなシャント作成術(人工血管による場合もある)、前述のカテーテル挿入などが必要になります。当院では腎臓内科、放射線科、当科で治療内容を検討し、最適な治療を目指します。
その他
心臓、血管に関わる疾患について手術を含めた治療法について患者様に説明した上で、患者様と一緒に治療法を検討させていただきます。
心臓血管外科では一般社団法人National Clinical Database(NCD)および一般社団法人 日本心臓血管外科手術データベース(JCVSD)への 手術・治療情報登録を行っています。
担当医
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