NST便り2021.9月号
2021年09月02日

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<亜鉛について>

亜鉛についての勉強会が7月29日に実施されました。今回はその中で紹介された情報を皆さまにお伝えいたします。

 亜鉛が欠乏すると一般的に皮膚炎、口内炎、脱毛、褥瘡、食欲低下、易感染性、味覚障害、貧血等の症状が現れるといわれています。特に褥瘡や食欲低下は入院患者さまの離床を妨げる要因になってしまいますが、薬剤で亜鉛を補うことにより、褥瘡評価スコア(PUSHスコア)が改善する報告があります。(右図)

透析患者さまにおいては亜鉛投与によって、ESA(赤血球造血刺激因子)反応性が改善したという報告もあります。栄養状態の指標として、アルブミンだけではなく亜鉛もモニターすることは褥瘡の予防や腎性貧血の早期治療に効果的なようです。

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亜鉛摂取量は成人において一日あたり女性で8mg、男性で10mg摂取することが推奨されています。日本人平均摂取量は推奨摂取量より約1mg不足していると言われていますので、意識的に亜鉛の摂取を心がけることが大切です。亜鉛が多く含まれている食品だと、牡蠣には100gあたり13.2mgほど亜鉛が含まれ、豚レバーは100gあたり6.9mgほど亜鉛が含まれています。実際に牡蠣100gを食べるとなると毎日大粒サイズを5個、豚レバーは毎日200g食べなければなりません。亜鉛は卵、肉類に比較的多く含まれるので、ひとつの食材に頼らずに毎日続けて複数の食材を摂取するよう心掛けましょう。治療を要するような亜鉛欠乏状態では亜鉛を補充する医薬品が使用されることがあります。

患者さまが一日でも早く離床できるようになることは、ケアにかける時間を短縮させることになります。是非とも亜鉛をはじめ栄養管理に目を向けてみてください。もしアルブミンが3.0g/dL未満、亜鉛が80μg/dL未満でしたら栄養管理介入が必要かもしれません。その際は遠慮なくNSTにご相談ください。

投稿者臨床検査技師 中野 光
NST便り2021.6月号
2021年06月10日

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今月のNST便りは,言語聴覚士が行っている「直接的嚥下訓練」についてご紹介します.

【直接的嚥下訓練とは】

直接的嚥下訓練は,安全に嚥下するための方法を身につけ、食物を嚥下することを通じて嚥下機能を改善させる訓練です.安全に嚥下するための方法には,姿勢調整,食物形態調整,嚥下手技,食器の工夫,環境調整などがあります.

【直接的嚥下訓練の適応】

直接的嚥下訓練は食物を用いて実際に食べることにより,摂食機能を高める訓練であるため,誤嚥や窒息など深刻な問題を引き起こす可能性があります.訓練の適応を知り,条件を満たしているかを確認して訓練を行うことが大切です.要点を以下の表にまとめてみました。

直接的嚥下訓練の注意点

経口摂取開始の前提条件

✓医師・歯科医師の指示により開始.

(前提条件,開始基準の理解)

✓実施基準の遵守

✓訓練中は状態をチェック

✓問題があれば医師,他スタッフへ報告

✓意識が覚醒:JCSで1桁

✓全身状態安定:重篤な併存症なし,バイタル安定,脱水・栄養障害なし

✓呼吸状態安定:Spo2 95%以上,呼吸数20回分/未満

✓唾液,少量の水で嚥下反射あり

✓口腔内が清潔で湿潤している

体調・状態の変化

覚醒状態,顔色,呼吸状態

嚥下状態

✓むせ,咳,湿性嗄声

✓呼吸,声の変化

✓口腔内残渣

摂食状況

姿勢や摂食方法など遂行状況と効果

詰め込み,流し込み,注意散漫など危険行動の有無

訓練を中断すべき状況

直接的嚥下訓練中止を検討すべき

✓頻回なむせや湿性嗄声

✓発熱

✓痰の増加

✓炎症反応(CRPWBC高値)

✓意識状態悪化

✓全身状態悪化

✓肺炎を繰り返す

✓再評価にて食物誤嚥・唾液誤嚥

✓呼吸状態悪化が持続する

✓意識状態悪化が持続する

✓全身状態悪化が持続する

✓長期にわたる拒食

【段階的摂食訓練】

食物形態を段階的に上げていく訓練です.リスク管理には十分注意を払うことが重要です.小児から高齢者までいずれの年齢層において,何らかの理由で長期間摂食を行っていなかった場合,段階的に摂食を進めることによって,安全で効率的に摂食が可能となる場合があります.(下表)

段階的摂食訓練における難易度のアップ

1.食物形態の難易度を向上させる

2.摂取食物の量を向上させる

3.食事摂取頻度を向上させる

4.食事介助から自力摂取へ変更する

5.代償的な食事摂取方法(摂取方法・姿勢・一口量)を減らす.

※まず食物形態と量を向上させ,次にその他の条件を変更します.

※上記条件を複数同時に変更しないことがコツです.

条件を一つずつ変更することで,万一トラブルが発生した時にもすぐに原因がわかり,対処できます.

【食事アップの基準】

  • 摂取時間が30分以内で,7割以上摂食が3食続いたとき.

※チェックポイントを観察して,明らかな変化がない場合のみ食事アップします.

※嚥下障害が強く疑われるときは,9食(3日間)の様子をみて下さい.

食事アップ検討時のチェックポイント

✓発熱の有無

✓呼吸状態

✓呼吸音

✓胸部X線写真

✓排痰量

✓咳の有無

✓患者の訴え

✓食事時間

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~最後に~

 今回はST目線で,専門的な内容になりましたが,経口摂取を継続することが一番の訓練になります.しかし,誤嚥を完全に防ぐことは難しいことです.なぜ,食事形態を調整するのか,簡単な物性から始めるのか少しでもご理解いただければと思います.

投稿者言語聴覚士 河崎 大法
NST便り2021.4月号
2021年04月07日

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みなさん、こんにちは。

今回のNST便りは、経腸栄養に関連したお知らせです。

様々な疾患や障害により、口から直接食事をとることが困難な方がいらっしゃいます。

そのような場合、鼻から胃へ、または内視鏡を使ってお腹から胃へチューブを入れて、そこから栄養を摂るという経腸栄養法がとられることがあります。

この方法は、その方にとってのお食事であり、栄養をとる手段でもあるのでとても重要なものです。

経腸栄養法は、入院中の患者様はもちろん、在宅療養をされている方、施設等で療養されている方もほとんどが下のイラストのような栄養摂取方法をとられています。

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これらの方法は、栄養剤等を入れるパックや接続するチューブ、コネクターなど様々なものを使用します。その接続に関して、これまでは注射や点滴などの接続口が似ている、又は接続することが可能で、血管内に栄養剤が投与されたり、反対に注射や点滴などが鼻や胃に留置されている管に間違って接続されてしまったり、重大な医療事故になるケースがあり問題となっていました。そのため、間違った接続ができないように工夫されてきました。

注射や点滴などの接続口が医療事故防止のために世界的に統一され、日本も追従することになりました。当院でも統一に向けて活動しています。

≪変更内容

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この図だけでは難しいかもしれませんが、患者様に挿入されている経鼻チューブや胃瘻カテーテル(赤い〇の部分)に、接続するコネクター部分(青い〇の部分)が変更になることを指しています。

その変更になる接続口が下のイラストです。

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当院では、4月~5月を目標に随時変更していく予定でいます。

ご不明な点がございましたら、それぞれの病院や施設等でご確認いただけますようご周知いただきたいと思います。

まだまだ、新型コロナウイルス感染が騒がれていますが、皆様もお身体に注意してお過ごしください。

投稿者摂食嚥下障害看護認定看護師 髙橋 美和子
NST便り2020.9月号
2020年10月12日

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NST活動~摂取エネルギー量を増やす工夫~>

201810月、20192月のNSTだよりで当院でのNST活動について書きました。今回はその続きとして、食事摂取量(摂取エネルギー量)増やす工夫について書きます。

人がなにか病気になって体調が悪化した場合、食欲が低下します。食欲が低下し食事が摂れなくなる場合、すぐに何も食べられなくなる場合もありますが、徐々に食事が取れなくなることが多いです。もともと普通の食事が摂れていたけれど、だんだん柔らかいものしか食べたくなくなり、そのうち、スープや汁ものだけになり、更には水分のみしか受け付けなくなる、という具合です。病気やけがで入院をした場合、治療はすぐに開始されますが、その効果が出て病気やけがが回復(改善)するまでには時間がかかります。その回復途上で医師から食事の許可が出たとしても、とくに高齢の方ではすぐに食事を全量食べられない場合があります。このようなときは、液体のもの、柔らかいものならなんとか食べられる、ということが多く、そのような場合に当院では「付加食品(栄養補助食品)」といって、柔らかいゼリー状の栄養食品や液体状の栄養剤をおつけしています。病気やけがからの回復においては栄養状態が良いことが重要であり、NSTでは、まず、ゼリーやジュース状の栄養剤で栄養状態の改善を図った上で、食事の摂取量が増えるよう工夫する、といった方法を取ることが多いです。また、ゼリー状の食品は、加齢や体力が落ちて飲み込み(嚥下)の機能が低下した方にも適しています。

この他の工夫として「ハーフ食」といって、すべての食事の量を半分にしてお出しすることがあります。全部食べても半分のカロリーの食事をお出しするのでは栄養の状態が悪化するのでは?と思われるかもしれません。しかし、食欲が低下して通常の食事の1割くらいしか食べられない、という状態はNST活動をしていると意外とよくみられ、そのような場合に、「毎食朝昼晩、お椀いっぱいのご飯を見るとそれだけでげんなりしてしまう」と患者さんはおっしゃいます。そのような場合に半量の食事から開始しますと、患者さんの「食事に対する心理的圧迫」が取り除かれ、食事摂取量が増える、ということがあります。

また、麺類のお好きな方には「昼のみ麺」、パン食がお好きな方には「朝パン食」などの工夫もできます(高血圧症などの治療中で制限食の方には対応できない場合があります)。

NST回診を週1回行い、患者様のお食事の希望などもお聞きしながら上記のような工夫を行って、食事を少しでも多く摂取していただけるよう、NST活動を行っています。

投稿者:IBDセンター部長 折居 史佳
NST便り2020.8月号
2020年08月11日

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みなさん、こんにちは。

新型コロナ肺炎が未だ落ち着かない状況にありますが、いかがお過ごしでしょうか?今回は、この感染症にかかわる栄養状態の低下についてお話したいと思います。

新型コロナ肺炎は、その感染拡大により、私たちの栄養状態も脅かされています。この肺炎の特徴的な症状でもある『臭覚・味覚障害』と、私たちの生活を大きく変化させた『自粛生活』がどのように栄養状態に影響するのかをお話していきます。

ひとつめとして、臭覚・味覚障害からお話していきましょう。

この肺炎の症状として、息苦しさ、咳や痰が挙げられますが、もう1つ、特徴的な症状が『臭覚・味覚障害』です。この障害が起こるメカニズムとして、ウイルスが直接的に神経細胞へダメージを与えることで起こると考えられています。

臭覚や味覚の変化は食欲低下につながり、特に子どもや高齢者にとっては、脱水に陥りやすく、容易に栄養状態の低下につながってしまう可能性があります。

ふたつめは、自粛生活・隔離による影響です。

緊急事態宣言の中、「不要不急の外出は避ける。」、「3密を避ける」などの言葉が飛び交いました。また、学校の休校により、遠隔授業、在宅ワークなど私たちの生活は一変しました。

感染のリスクが高いと言われている高齢者だけではなく、オリンピックをはじめ、身近にあった学校の運動会や様々な行事までもが延期・中止となることにより、若年者においても活動量が減少し、生活習慣病の悪化、体力の低下が懸念されています。

病院内では面会制限、PCR検査での陰性が確認されるまで隔離された状態で、検査が陰性でも再び陽性になる可能性もあり、隔離された状況が長期化する場合もあります。

このような自粛生活、活動量や運動量の低下は、栄養状態だけではなく免疫力の低下にもつながり、感染症にもかかりやすくなってしまいます。感染症にかかると食欲低下、吸収低下などにより栄養状態が悪化するという悪循環に陥ります。

o Toトラベル事業による観客の導入など、少しずつ規制も緩和されてきた中ではありますが、まだまだ感染予防は必要です。みなさまも十分ご注意いただき、ご自愛ください。

投稿者:ICU 高橋 美和子
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