NST便り2015.5月号
2019年05月30日

今回は口腔乾燥(お口の渇き)についてお話させていただきます.
みなさんは,お口の渇きが気になったことはありませんか?
お口の渇きの原因は様々です.

<お口の渇きの原因として考えられること>
(1)加齢による唾液分泌量の低下

(2)口の渇きを強くさせる病気
シェーグレン症候群
糖尿病
腎臓疾患 

(3)口腔外科治療後などの口腔疾患によるもの

(4)薬物療法,放射線療法の影響
向精神薬や降圧剤,利尿薬などの副作用
抗生物質の副作用
放射線治療により唾液腺への影響

(5)開口,口呼吸の習慣

(6)水分制限,絶飲食による水分摂取の減少
消化器内科・外科治療による絶飲食
腎不全、心不全のための飲水制限

(7)心因性
神経症や精神的興奮、ストレス

(8)室内の乾燥などの環境要因
これらの原因による口腔乾燥は,こまめに水分をとることで改善することもありますが,病気により水分制限をされている方にとっては、難しいと思います.むせたり,肺炎を繰り返したり,水分さえ口にできない方もいらっしゃいます.
口腔乾燥は,「話がしにくい」,「口が開きにくい」,「食べ物が飲み込みにくい」などの原因になります。また,口腔内の常在菌が,口腔乾燥により有害な作用を起こすこともあり,肺炎や歯周病などの原因になってしまうのです.
以前の「NST便り」でもお話させていただきましたが,最近は様々な口腔ケア用品が販売されています.当院や近所の薬局などで販売している洗口液や保湿剤です.アルコールの含まれていないものをうまく活用していくことで改善することもあります.是非、お試しください.

投稿者ICU看護師 髙橋 美和子
NST便り2015.1月号
2019年05月29日

≪グルテンアレルギー≫

パンやピザ,ビールを摂るとお腹がゆるくなる人がいます.
日本では主に米を食するので気がつかれないこともあって,あまりグルテンアレルギーは認識されていませんが,実際には麦を含む食品に対するこのアレルギーはまれではないのです.
小麦粉などはみるからに炭水化物のかたまりと思ってしまいますが,実はかなりの量のタンパク質を含んでいます.
 
小麦粉中の蛋白質含量は6~15%で,いろいろな特性を持つ蛋白質が混在しています.これらはその溶解性の差から,アルブミン,グロブリン,グリアジン,グルテニン,不溶性タンパク質に分類されています.実際の量では,約85%がグリアジン(分子量5万)とグルテニン(50万)で占められています.両者はほぼ同量です.
この2つのタンパク質はある条件で水を介して結合し,種々の粘度と弾性を示します.すなわち食品の粘性と弾性が増し,気泡ができて,食感がとてもよくなります.パンやピザの生地を思い出してみてください.小麦粉を水でこねて発酵させるのは同じですが,形成されるグルテンの分子形態が異なるため,形態も食感も異なります.
一方で,高分子のグルテンは抗原性も発揮し,人によっては下痢が止まりません.このため,パンやピザ,シリアルを嫌う人もいるのですが,このグルテンアレルギーに対する「グルテンフリー食品」は,日本でもかなりの種類のものが手にはいります.
 
また,グルテンが摂れない人でもビールを楽しみたいこともあります.欧米ではパブやスーパーで簡単に「グルテンフリー」とかかれたビールが楽しめます.日本では"残念ながら"と思っていましたが,じつは「グルテンフリー」とうたっていないだけで「グルテンフリー」は簡単に手に入るのです.原料に麦を使っていなければいいのです.そう,つまり第3のビールという「あれ」です.たとえば「のどごし<生>®」は「グルテンフリー」ビールとしてアレルギーの人も大いに楽しめます.もっとも"真のビールではない"と,味にこだわるひとには我慢できないでしょうけど・・・・・・・・・・・

投稿者脳神経外科 黒川泰任
NST便り2015.9月号
2019年05月28日

食用油は主に動物油と植物油で,その種類は何十種類にも及びます.
私たちが日常,調理などに使う油はほとんど植物油です.主なものに大豆油,ピーナッツ油,グレープシールド,アボカドオイル,アマニ油,エゴマ油,米油,椿油,ひまわり油,コーン油,紅花油,採種油,ゴマ油,オリーブオイルなどがあります.
今回は最近話題になっている,健康に良い油をいくつか取り上げてお話しいたします.

<エゴマ油・アマニ油>
特徴としてはω(オメガ)-3脂肪酸のひとつであるα-リノレン酸が多く含まれています.α-リノレン酸は私たちの体内で作ることができませんが,体に必要な脂肪酸で,EPAとDHAなどに変化し,利用されます.
EPAはいわしなどの魚類に多く含まれており,花粉症の改善,アトピーの改善,血液をサラサラにするなどの効果があります.
DHAもいわしやサンマなどの魚類に多く含まれ,記憶力・学力の向上,視力向上,動脈硬化予防,高脂血症の予防,血栓症の改善,運動能力の改善に効果があるといわれています.
他にも中性脂肪,血中コレステロールの軽減,高血圧,糖尿病,動脈硬化,不整脈の予防などたくさんの効能があります.
エゴマ油・アマニ油は熱に弱いため,食べ物に直接かけて食べるのがいいそうです.一日の摂取量の目安は小さじ1杯の量で一日に必要な2gが摂れ,イワシなどの2尾分に値します.
酸化しやすいため保存は冷蔵庫内です.

<オリーブオイル>
オリーブオイルの中の脂肪酸の70~80%はオレイン酸です.
オレイン酸は余分なコレステロールを運び出す善玉コレステローは減らさず,動脈硬化の原因となる悪玉コレステロールを減らす効果があり,心筋梗塞や脳梗塞などに予防に効果があるといわれています.
また,高温になっても酸化しにくく,揚げ物にも最適です.

<アーモンドオイル>
アーモンドオイルも悪玉コレステロールを下げる働きや,ビタミンEを多く含むため乾燥肌などに対しても効果があります.
酸化しにくく,熱に強いという特徴があり,加熱調理にも使えます.

食用油にも色々な種類があり,体に良い影響を与えるものを試してみてはいかがでしょうか?

投稿者6階西病棟 看護師 井林 富美子
NST便り2015.3月号
2019年05月27日

医薬品の経腸栄養剤について

<栄養素についておさらい>
三大栄養素とは,炭水化物(糖質),脂質,タンパク質のことで,エネルギー量はそれぞれ4 kcal/g,9 kcal/g,4 kcal/gとなります.摂取するエネルギーのバランスは炭水化物(糖質) 55?60%,たんぱく質15?20%,脂質20?25%位が良いとされています.これにミネラル,ビタミンが加わると五大栄養素と呼ばれます.これらをバランスよく摂取することが病気の予防にもつながります.

<医薬品の経腸栄養剤>
医薬品の経腸栄養剤は,窒素源の違いにより(消化が必要か,必要ないか)『消化態栄養剤』,『半消化態栄養剤』に分けられます.消化態栄養剤のなかでも窒素源が合成アミノ酸から構成されているものは『成分栄養剤』と呼ばれます.当院では「アミノレバンEN潤・v,「エレンタール潤・v,「ラコール潤・v,「エンシュア・リキッド潤・vという医薬品が採用されています.

・消化態栄養剤:当院に採用はありませんが,「ツインライン潤・vが有名です.消化が必要ないのはもちろんですが,吸収されやすく低残渣が特徴です.

・成分栄養剤:当院では「エレンタール潤・vが該当します.糖質はデキストリン,窒素源はアミノ酸で構成されており,脂肪をほとんど含まず,ほとんど消化を必要としません.

・半消化態栄養剤:当院では「アミノレバンEN潤・v,「ラコール潤・v,「エンシュア・リキッド潤・vが該当します.アミノレバンEN潤・ヘ肝機能が低下している人のために分岐鎖アミノ酸が主成分となっています.また,これらは成分栄養剤と違って消化を必要とします.


最近,半消化態栄養剤の「エネーボ潤・vという医薬品が発売になりました.エネーボ潤・ノは従来の半消化栄養剤になかった食物繊維やフラクトオリゴ糖,クロム・モリブテン・セレンなどの微量元素,カルニチンが配合されており,下痢が少なく,免疫力の低下を防ぐといわれています.
経腸栄養剤には適切な栄養素が配合されており,香りや味も色々とありますので幅広く選択できるようになってきています.

投稿者薬剤師 後藤 圭介
NST便り2015.8月号
2019年05月26日

咀嚼訓練のためのゼリー!! 「プロセスリード」のご紹介

「プロセスリード」は2014年9月に,大塚製薬から発売された嚥下訓練のためのゼリーです.従来のゼリーと異なり,咀嚼するとペースト状になるような性質をもっています.つまり,口の中で食べ物の塊を作る練習ができる特別なゼリーです.
商品名の由来は,嚥下の仕組み「パルマーのプロセスモデル」という言葉からきているそうです.
今回は,この「プロセスモデル」についてご説明します.

嚥下という行為には2つのモデルが考えられています,具体的には,「のむ」と「食べる」ことの違いです.まず,「のむ」という行為は液体を飲みこむという事なのですが,食物(=液体)を口の中で取り込んで(口腔準備期),舌背が口蓋にそって後方へと移動します(口腔送り込み期).その後,嚥下反射が惹起され(咽頭期),食道入口部が開き,食塊が食道を通過します(食道期).これを4期連続モデルと言います.

従来,古典的には「嚥下」は液体をのむ時に分析された上記の4つの過程で行われていると考えられてきました.実際は液体を意識的に「のむ」過程によく当てはまり,嚥下という現象を考えるには分かりやすいものでした.
ところが,ヒトや動物が任意に固形物を飲み込んでいく過程ではこれとは異なる動作が連続して,また一部は重複して起こる事が報告され(1992,J.B. Palmar, Coordination of mastication & swallowing)、ただ「噛むこと」+「飲み込むこと」ではないと考えられる様になりました.これを「パルマーのプロセスモデル」と呼びます.


<パルマーのプロセスモデル>
まず固形物は舌により臼歯部に運ばれ,咀嚼により食べ物の塊と唾液が混ざり嚥下可能な大きさまで粉砕されます(processing).この際,舌は塊が臼歯部から落ちないよう前後方向の動きを軸に捻転します(stageⅠtransport).ふつうは咀嚼している間は口腔内に食べ物の塊があると思われるのですが,実は咀嚼中に,塊は少しずつ咽頭に流れ込んでいます.(stageⅡ transport) さらに咽頭に流れ込む際にも食べ物の塊が作られていきます.これは4期連続モデルとは異なり,咀嚼中に同時に口腔送り込み運動が開始され,嚥下反射惹起前に咽頭内で食べ物の塊がつくられていくということになります.このことを咀嚼嚥下といいます.
少し難かしい話ですが,咀嚼をして嚥下するということは,「丸呑み」とは違う動きをしているということです.

「プロセスリード」に話を戻します.
嚥下障害のある方にとっては,食事の形態がとても重要です.当院の食事形態では,まず嚥下訓練食(ゼリー)から開始し,「ミキサー食」⇒「きざみ・とろみ食」⇒「一口大食」⇒「軟菜食」⇒「常食」と難易度があがっていきます.「ミキサー食」は咀嚼せずに丸呑みできますが,「きざみ・とろみ食」になると咀嚼が少し必要になってきます.「きざみ・とろみ食」に食事形態を上げる前に咀嚼嚥下練習をするために作られたのが,「プロセスリード」なのです.

先日勉強会で「プロセスリード」について学んできたばかりなので,簡単にご紹介させて頂きました.興味のある方は嚥下動作を実験してみて下さい.味は抹茶と海老と柚子の3種類があるらしいです.

投稿者言語聴覚士 河崎大法
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