
2025年9月
≪試食会の報告≫
7月24日に、栄養管理委員会・NST委員会合同勉強会『病院食の形態(一般食・特別食)と機能付加食品』
を開催しました。
2年続けて実際に試食してもらう形式で行う事が出来ました。
毎年新入職員を中心に参加して頂き、「配属病棟ではあまり見ることのない食事を食べることが出来た」
などの声も頂けました。

また付加食品・経管栄養の試食では「意外に美味しいものもある」、「経管栄養は口から摂取するには
独特な味がする」と普段、患者様に配膳している食品を実際に食べる事で様々な感想を頂けました。
栄養状態の改善は腸管を早期に利用できることが重要になってきます。その際、病院食、付加食品などを
実際に食べることで患者様との情報共有にも繋がると思います。
来年度も引き続き開催していきたいと思っておりますので、新入職員以外の皆様も
是非参加してください。

(今回は栄養管理室 北村 雄治が担当しました)
NST(栄養サポートチーム)

2025年4月
〈睡眠薬と食事量の関係〉
3月のNST勉強会は睡眠薬が食事量に与える影響をお話させていただきました。
NSTで回診していますと、眠たくてぼーっとした状態の患者さんが食事を
しっかり食べられていないケースが散見されます。
もし、病院で服用している薬が原因で食事ができなくなってしまうようであれば、
解決したいと思い、今回は睡眠薬に的をしぼってさせていただいた次第です。
眠たくてボーッとした状態で食事量が上がらない原因を「認知機能の低下」と
「嚥下機能の低下」に大きく分けてお話をさせていただきます。

・食べ物の認知は大脳の「大脳辺縁系」でおこなわれます。ここでは記憶の仕分け、記憶の符号化、
検索などの働きがあり、食べ物を目で見たり、匂いを嗅いだりすることによって「空腹感」に基づく
「食欲」が生ずると考えられています。一部の睡眠薬はこの部分にも作用するため、
「食欲」が落ちる可能性があると考えられます。
・次に食べ物が口に入った時のことを考えてみます。食べ物が口にはいると「咽喉頭粘膜」の感覚器官が
「食べ物」が入ったことを認識します。この情報が延髄にある「嚥下中枢」に届き、「食べ物」が
口の中にはいったことを大脳に伝え、味、温度、硬さなど情報が認識されます
。同時にこの「嚥下中枢」から嚥下に必要な筋肉を動かす指令が出されます。
上記と同様、一部の睡眠薬は「嚥下中枢」にも作用するため、食べ物の呑み込みが
うまくいかなくなる可能性があると考えられます。
現在、使用されている睡眠薬は「オレキシン受容体拮抗薬」、「メラトニン受容体作動薬」、
「GABAA受容体作動薬(ベンゾジアゼピン系睡眠薬)」の大きく三つに分けることができます。
オレキシンは脳内の視床下部で産生され、神経細胞のオレキシン受容体に結合し覚醒を促します。
結合を邪魔するのが、「オレキシン受容体拮抗薬」になります。
メラトニンは松果体で産生される、覚醒から睡眠への移行を促す脳内産生物質です。
メラトニン受容体は目で見た情報を脳に届ける神経上(主に視交叉上核)に多く存在します。
メラトニンの代わりをする薬が「メラトニン受容体作動薬」です。
GABAAは興奮した神経細胞を鎮める脳細胞で産生される物質です。脳神経の興奮した神経細胞のGABAA受容体に
結合して興奮を鎮めます。この作用を強めるために開発されたのが、同じ受容体に結合する
「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」になります。
「オレキシン受容体拮抗薬」、「メラトニン受容体作動薬」は大脳辺縁系や嚥下中枢への 影響は弱いのですが、
「GABAA受容体作動薬(ベンゾジアゼピン系睡眠薬)」が作用する「GABAA受容体はこの部分に
比較的多く存在するため、薬の効果も出やすいですが、副作用の起こる可能性も出てきます。
「オレキシン」も「メラトニン」も「GABA」も元々頭の中に存在する伝達物質ですので、
日頃のストレスや睡眠不足などが日々の食欲に影響を与えると思います。
薬を使用する前に生活のリズムを整えることも大切になります。

(今回は薬剤部 岡部 幸男が担当しました)
NST(栄養サポートチーム)

2024年10月
NST活動では患者様ごとに一日に必要なエネルギー量の目安を算出し、
そのエネルギー量が摂取できるようプランを立て、支援を行っています。
この「一日に必要なエネルギー量」は「基礎エネルギー代謝量:basal energy expenditure : BEE」と
「活動係数」と「ストレス係数」により算出されます。

「一日必要エネルギー量」=「基礎エネルギー代謝量」x「活動係数」x「ストレス係数」となります。
基礎エネルギー代謝量というのは、健康な人が何もしないで横になっているときに生命を維持するために
必要なエネルギー量のことです。活動係数というのは、どれくらい体を動かすかの指数、ストレス係数というのは、
病気やケガがあるためにどれくらい余計にエネルギーを使っているか、という指数です。
活動係数は、寝たきりだと1.0、ベッド上安静だと1.2、一般労働では1.5〜1.7程度、ストレス係数は、
感染症で1.2〜1.5、術後で1.1〜1.2、熱傷で1.2〜2.0と言われています。
今回のNSTたよりでは、この基礎代謝エネルギー量の測定法の歴史について書いてみようと思います。
17世紀、ガリレオ・ガリレイが活躍したのと同時期に、イタリアの医師で科学者のサントリオ・サントリオが
現代の「基礎代謝」に相当する事実を発見しました。彼は20歳代から30年間にわたり、毎日、食前食後、排泄の前後、
睡眠の前後に大きな秤に乗り、体重を測定、また、汗を含む排泄物の量もはかり、記録しました。
その結果、排泄物の量は一日に食べた物の量の半分以下であることに気づき、この差の分は、知らぬ間に汗孔から蒸発したと考えました。
しかも、その量は、部屋の環境や運動の量で異なることも発見しました。この研究は当時の人々を驚かせただけに終わりましたが、19世紀後半に物質代謝が論じられるようになって初めて、脚光を浴びることになりました。
サントリオは体温計と脈拍計の発明者としても知られています。
19世紀後半から20世紀にかけて直接熱量測定法(装置)が開発されました。これは断熱材で完全に密閉され、
室温を冷却水で一定に保つようにした小室をつくり、その中に被検者が入り冷却水が加熱される程度から
被検者の放熱量を知ろうとするものでした。この装置による4日間の測定結果が、摂取した食物エネルギーから、
排泄された尿・便のエネルギーを引いたものと一致したことが報告され、サントリオが「知らぬ間に汗孔から蒸発した」と考えたエネルギーが「基礎代謝」であることが証明されました。
直接熱量計が大型で高度な技術を必要とするため、より簡便なものとして、生体の酸素消費量、二酸化炭素産生量、
尿中窒素量を測定し、呼吸商および非蛋白呼吸商を算出してエネルギー代謝を測定する間接熱量計が、ほどなく開発されました。
現在も基礎エネルギー代謝量(厳密には基礎エネルギー代謝量にストレス係数をかけた安静時エネルギー消費量)を測定する場合は、この、間接熱量計が使用されています。
間接熱量計は高価なため、すべての医療機関に配置されているわけではありません。当院にも間接熱量計はありません。
そのような場合には、ハリス・ベネディクトの式という計算式を用いて、基礎エネルギー代謝量を推定しています。
参考文献:
基礎代謝測定法の原理 中野昭一 検査と技術13巻8号 p706-710
科学的診断の先駆者サントリオ 小川鼎三 medicina8巻1号 p130
検査を築いた人々サントリオ・サントリオ 酒井シヅ 検査と技術10巻11号p996
(今回はIBDセンター 折居史佳が担当いたしました)
NST(栄養サポートチーム)

2024年9月
7月25日にNST勉強会「病院食の形態(一般食・特別食)と機能付加食品」を行ないました。今年は5年振りに職員食堂で、
実際に試食をしてもらう形式で開催することが出来ました。
職員の方々に普段口にすることのない特別食を食べて頂き、一般食との違いを実際に食べ比べ、NST担当者に各食種の特徴について質問したりなど
積極的に参加していただけました。特に『お祝い膳』のコーナーは一番人気があり、人混みが出来るほどでした。

付加食品・経管栄養のブースでは、「配膳時に見ていた付加食品が意外に美味しかった」、
「経管栄養を口から飲んでみたら今まで感じたことがない味で驚いた」など、実際に食べていただく事でしか得られない体験が出来たという声もありました。
感染症対策で座学中心の勉強会をここ数年行なっていましたが、食事に関する事はやはり実際に食べていただく事だということを改めて感じました。
また来年以降も継続して開催し、多くの職員に来て頂ければと思います。

(今回は栄養管理室 北村 雄治が担当いたしました)
NST(栄養サポートチーム)

【嚥下内視鏡検査について】
2024年3月28日に開催した勉強会、「嚥下内視鏡検査でわかる誤嚥の実態」について書かせていただきます。
「嚥下内視鏡検査(以下、VE)」は,「嚥下造影検査」と共に,摂食嚥下機能評価のゴールドスタンダードとして広く普及しています. 外からは診ることのできない,咽頭・喉頭などの諸器官の動きや食塊の動きを観察し,誤嚥や咽頭残留といった異常所見の要因を判別することができます.
VEによる嚥下機能評価は「兵頭スコア」を使用します.
下記の項目の合計スコアを4段階で評価し,嚥下機能正常・リスクあり・経口摂取困難を診断します.
①喉頭蓋谷・梨状陥凹への唾液貯留
②声門閉鎖反射・咳反射の惹起性
③嚥下反射の惹起性
④着色水嚥下による咽頭クリアランス
①の唾液貯留は嚥下前の唾液貯留状態を評価します.高度嚥下障害患者では,吸気時に梨状陥凹にたまった唾液が喉頭に流入しています.
②の声門閉鎖反射・咳反射は健常者ではファイバーが喉頭にあたると激しくせき込みます.高度嚥下障害患者では咳反射は弱く麻酔もなしで気管内にファイバーが入っていきます.
③の嚥下反射惹起については,高度の嚥下障害患者は唾液・食物がたまっても嚥下反射が惹起されなくなります.
④の咽頭残留は嚥下反射が惹起しても食塊が梨状陥凹・喉頭蓋谷などに残留している状態です.高度嚥下障害では喉頭流入します.
以上を4段階で点数化して
○4点以下:普通食をおおむね制限なく経口摂取可能.
○5-8点 :多少なりとも経口摂取は可能だが,補助栄養の併用が必要.または液体へのとろみ添加など食物形態の調整が必要.
○9点以上:経口摂取は困難.
当院ではSST(Swallowing Support Team;摂食嚥下サポートチーム)で,対象患者がいる場合,週1回嚥下内視鏡検査を実施しています.実際の食事場面の印象とは乖離している症例や,誤嚥リスクが高くて食事へ移行するのを控えていましたが,内視鏡検査では良好な症例もいました.外見上の判断だけでは患者様の本来の能力を把握するのは難しいと日々痛感しています.
(今回はリハビリ 河崎 大法が担当いたしました)
NST(栄養サポートチーム)
