NST便り2023.4月号
2023年04月20日

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2023年4

<免疫栄養について>

 免疫栄養は、1990年代に生体防御能や免疫能を増強すると考えられる栄養成分を薬理量投与して、対象とする疾患の治療成績向上を期待して行われた栄養療法です。手術後の合併症予防や入院期間短縮、死亡率低下などの予後改善を目的として行われてきたわけですが、疾患、重症度、手術の術式、合併症の発生頻度などにより効果のバラツキが多く、救急期の患者さんでは効果が出にくいこともあり、現在は積極的に使用されることがなくなりました。ただ、現在でも手術が行われる疾患や癌領域での研究は欧米などで広く行われています。

 そんな中で、サルコペニア(筋減少症)の予防・治療や傷を早く治す効果がある成分が含まれている栄養補助食品を当院でも使用しています。主な成分と作用を下に示します。

CaHMB・・・・分岐鎖アミノ酸であるロイシンの代謝物。タンパク合成作用とタンパク分解抑制作用を併せ持つ。

・グルタミン・・・アミノ酸の一種。創傷治癒を促進させる。

・アルギニン・・・アミノ酸の一種。免疫反応の活性化と血管拡張作用がある。一方で、生体内でNOを発生させるため、細胞障害作用も有する。免疫活性化と合わせて、感染など炎症症状がある場合には症状が悪化することもある。

栄養が十分摂取できていない人は、体の中のタンパク質もエネルギーとして使われてしまうため、投与したアミノ酸がタンパク質になっても、すぐにアミノ酸に戻ってエネルギー源として使われてしまいます。アミノ酸、タンパク質を補助として使用する場合には、最低限の糖質摂取がなされていることが前提になります。入院されている患者さんの食事は、疾患、体の状態、食品、栄養補助食品を含めた全体的なバランスを考えていく必要があります。

最後に、2023113日から15日にかけて開催された第26回日本病態栄養学会学術集会で、この免疫栄養を活用した事例を発表させていただき、「座長賞」を頂きましたことを報告いたします。

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参考文献〉竹林克士:日本臨床栄養代謝学会Vol3(1):36-42.2021

鍋谷圭宏,坂本昭雄:外科と代謝・栄養541号:6-14.2020.2

Kazuhko Fukatsu:Ann Gastroenterol Surg:160-168.2019.3

土師誠二:外科と代謝・栄養502号:127-135.2016.4

Jeremy Z:Annals of Surgery:Vol236.No3.369-375:2002

(今回は薬剤部 岡部幸男が担当いたしました)

投稿者薬剤部 岡部幸男
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