「ADA」 荒木 真
2024年07月01日
2024年のADAが終わりました。今年の目玉の一つとして、高血糖緊急症(DKA、HHS)のガイドラインが15年ぶりに刷新されました。とうとうβヒドロキシ酪酸が診断基準に取り入れられたのです。「DKAの診断上の重要な特徴は、循環総ケトン体濃度の上昇であり、特にβヒドロキシ酪酸の直接測定が推奨される」と新しいガイドラインは述べています。従来の尿中ケトン体検査では、DKAの初期にはケトン血症の重症度が過小評価され、逆に後期には過大評価されることがあるため、この変更は画期的です。
糖尿病だけでなく、心臓や腎臓にも使われるようになったSGLT2阻害剤は今後も処方量が増加すると見込まれています。そのような中で、特に「血糖値の高くないDKA」の簡便な診断が求められています。3年前、βヒドロキシ酪酸のpoint of care testingを導入するか検討した際、赤字になるかもしれない検査なのにもかかわらず、検査部の方々が積極的に導入に動いてくれました。今では救急でも頻繁にβヒドロキシ酪酸の迅速検査が行われるようになり、DKAの早期発見が可能となりました。スタッフのこうした取り組みは患者さんには見えにくいものですが、その仕事が医療現場での日々の診療に大きな違いを生み出していると実感します。
投稿者腎臓内科主任部長 荒木 真