NST便り2020.9月号
2020年10月12日

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NST活動~摂取エネルギー量を増やす工夫~>

201810月、20192月のNSTだよりで当院でのNST活動について書きました。今回はその続きとして、食事摂取量(摂取エネルギー量)増やす工夫について書きます。

人がなにか病気になって体調が悪化した場合、食欲が低下します。食欲が低下し食事が摂れなくなる場合、すぐに何も食べられなくなる場合もありますが、徐々に食事が取れなくなることが多いです。もともと普通の食事が摂れていたけれど、だんだん柔らかいものしか食べたくなくなり、そのうち、スープや汁ものだけになり、更には水分のみしか受け付けなくなる、という具合です。病気やけがで入院をした場合、治療はすぐに開始されますが、その効果が出て病気やけがが回復(改善)するまでには時間がかかります。その回復途上で医師から食事の許可が出たとしても、とくに高齢の方ではすぐに食事を全量食べられない場合があります。このようなときは、液体のもの、柔らかいものならなんとか食べられる、ということが多く、そのような場合に当院では「付加食品(栄養補助食品)」といって、柔らかいゼリー状の栄養食品や液体状の栄養剤をおつけしています。病気やけがからの回復においては栄養状態が良いことが重要であり、NSTでは、まず、ゼリーやジュース状の栄養剤で栄養状態の改善を図った上で、食事の摂取量が増えるよう工夫する、といった方法を取ることが多いです。また、ゼリー状の食品は、加齢や体力が落ちて飲み込み(嚥下)の機能が低下した方にも適しています。

この他の工夫として「ハーフ食」といって、すべての食事の量を半分にしてお出しすることがあります。全部食べても半分のカロリーの食事をお出しするのでは栄養の状態が悪化するのでは?と思われるかもしれません。しかし、食欲が低下して通常の食事の1割くらいしか食べられない、という状態はNST活動をしていると意外とよくみられ、そのような場合に、「毎食朝昼晩、お椀いっぱいのご飯を見るとそれだけでげんなりしてしまう」と患者さんはおっしゃいます。そのような場合に半量の食事から開始しますと、患者さんの「食事に対する心理的圧迫」が取り除かれ、食事摂取量が増える、ということがあります。

また、麺類のお好きな方には「昼のみ麺」、パン食がお好きな方には「朝パン食」などの工夫もできます(高血圧症などの治療中で制限食の方には対応できない場合があります)。

NST回診を週1回行い、患者様のお食事の希望などもお聞きしながら上記のような工夫を行って、食事を少しでも多く摂取していただけるよう、NST活動を行っています。

投稿者:IBDセンター部長 折居 史佳
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