NST便り2020.7月号
2020年07月15日

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<ビオチンについて>

ビオチンとは水溶性ビタミンの一種で、すべての生物に必須のビタミンです。「ビタミンB7」もしくは「ビタミンH」とも呼ばれる、糖代謝や脂肪酸代謝などに関与する補酵素です。

食物中に多く含まれ、人の腸内細菌でも産生できるため欠乏症はまれですが、不足した場合には次のような症状が現れます。

〇 皮膚症状(皮膚炎・脱毛・粘膜症状)

〇 神経症状

〇 食欲不振、吐き気

〇 うつ症状

〇 その他(筋肉痛・結膜炎・有機酸尿)

通常の食生活ではビオチンが不足することはありません。ビオチンは食品中のタンパク質と結合しているため分解されにくく、壊れにくいビタミンです。先天性のビオチン代謝異常を持つ場合や、卵白を長期間多量に摂取するような場合を除けば欠乏症とはなりにくいでしょう。ビオチンは卵黄やレバー、玄米や豆類に多く含まれていますが、過剰に摂取したとしても水溶性なので尿中に排泄され、体内では問題となりません。

近年、ビオチンは美容に必要なビタミンとして様々なサプリメントに含まれるようになりました。美髪・美肌・疲労回復・アトピーの緩和などが効果として謳われています。通常の食事量では問題にならないのですが、サプリメントでのビオチン過剰摂取は、特定の免疫検査の測定系にビオチンが利用されているため、検査結果に干渉してしまいます。最近の検査試薬はこの点の改良がされ始めていますが、古い検査試薬を用いている場合では注意が必要となります。なお現在当院で検査している検査試薬では、特に影響はされないということが確認されています。

普段からサプリメントとしてビオチンを大量に摂取している方で、検査を受けるような方は診察の際に報告して頂いたほうが良いかもしれません。

投稿者:臨床検査技師 浅利 陽佑
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