NST便り2020.6月号
2020年06月04日

NST.jpg

<嚥下体操について>

ご存知の方も多いかと思われますが、食べ物を飲み込む際に食道ではなく、気管に入ることを「誤嚥」といいます。「誤嚥」は脳血管障害をはじめとした疾患の他、加齢でも起こりやすくなり、日常で誤嚥を繰り返していると誤嚥性肺炎に罹患してしまいます。

日常で誤嚥を予防することが重要であり、そのために嚥下機能(飲み込みの力)を維持する必要があります。嚥下機能の維持には、一般的には専門の知識をもったセラピストがリハビリを行う必要がありますが、訓練メニューの中には誰でも簡単に行うことが可能なものもあります。代表的なものが『嚥下体操』であり、それを今回紹介したいと思います。

①深呼吸

 鼻から大きく息を吸って、ちょっと止めて、口をすぼめて吐く。

②首の運動。

 1)左右を向く、左→正面→右→正面 2)左右に傾ける、左→正面→右→正面

 3)上下を向く、下→正面→上→正面 4)回す、左回り→右回り

③肩の運動

 1)ゆっくり上げ、ストンと下ろす

 2)腕を回す、前回し→後回し。

④頬の運動

 1)片方ずつ頬を膨らませる、左→右

 2)両方膨らませて両手をあて、ぷっとつぶす。

⑤顔の運動

 1)口を尖らせて「ウー」。

 2)口を横に広げて「イー」。

 3)上を向いて口を横に広げて「イー」。

⑥耳下腺マッサージ

 両手を頬にあて、ゆっくり円を描くようにマッサージ、前回し→後回し。

⑦舌の運動

 1)前に出す、後ろに引く。

 2)左右に動かす。

 3)唇を1周ゆっくりなめる、左回り→右回り。

⑧発音

 大きな声でゆっくりと発音する。

 「パ」「タ」「カ」「ラ」、「パンダのたからもの」。

※各10回ずつが目安。

1.jpg2.jpg

今回紹介したのは数ある中の1例です。

現在、デイサービスなど様々な所で嚥下体操が行われており、場所ごとにやり方に多少の違いがあると思われます。嚥下体操はあくまでも予防であり、やれば誤嚥をしないというものではありません。ただ、続けることで誤嚥性肺炎のリスクを下げる効果はあると思われますので、皆様も興味があればやってみて下さい。

投稿者言語聴覚士 稲井 宏則
カレンダー