NST便り2019.4月号
2019年06月13日

『嚥下障害の基礎、食事介助方法』

<嚥下のメカニズム>
Ⅰ.先行期   :食物を形や匂いを認識する。
Ⅱ.口腔準備期 :口に取り込み、噛んでまとめる。
Ⅲ.口腔期   :食物を喉に送り込む。
Ⅳ.咽頭期   :食物が喉を通る
Ⅴ.食道期   :食物が食道を通る。
以上5段階から構成されています。

<嚥下障害と誤嚥>
食べ物を上手に飲み込めない状態のことをいい、主な原因として、形態的な異常(口蓋裂等の先天的な異常、歯の欠損や口腔、喉などの手術等の後天的な異常)や神経・筋系の異常(発達障害や脳血管障害、パーキンソン病などの神経変性疾患等)、他にも加齢に伴う機能低下、認知症等があります。
『誤嚥』というのはこれらの原因により、気管に異物が入ることをいいます。「むせが有る誤嚥」と「むせが無い誤嚥」の2パターンがあり、いずれも誤嚥性肺炎の要因となっています。

<嚥下の評価方法>
嚥下の評価は、①認知機能  ②身体機能  ③口腔器官機能  ④嚥下機能などで行います。
一般的な検査方法として、①反復唾液飲み検査  ②改定水飲み検査  ③食物テストがあり、より専門的な方法として嚥下造影検査と呼ばれるものもあります。

<食事形態について>
食事を摂取しやすくするために、嚥下学会では食事の形態を細かく分類(2013)しています。
当院では患者様の嚥下機能に応じて、主食は米飯~ゼリー粥、副食は常食~ミキサー食にとろみや練り梅などを付加して提供しています。

<水分のとろみについて>
嚥下機能が低下している場合は水分でむせる人が多いため、とろみをつけることで「むせ」を減らすことが出来ます。嚥下機能に応じて適切なとろみの濃度に違いがあり、「薄い」、「中間」、「濃い」という学会分類が存在します。

<食事介助方法>
安全に食事を摂取するための代表的な方法を以下に掲載します。

●食事前
①口腔ケア :誤嚥性肺炎の予防、口腔器官機能の維持、全身状態の維持。
②環境設定 :食事に集中できる環境設定をする。
③姿勢設定 :嚥下機能が低下している場合、ベッドの角度を30、45、60度と調整することで誤嚥のリスクを下げることが出来ます。

●食事中
①何を食べているのか知らせる :食物をしっかり認識させ、体に食べる準備をさせる。
②一口量を調整する      :多すぎると誤嚥のリスクが高まる。
③食べるペースを整える    :食事時間は早くても遅すぎても誤嚥リスクが高まる。 1食につき30分が目安。
④飲み込む前に話かけない

●食後
①内服  :錠剤は口の中に残りやすい。
       薬が飲みづらい場合は薬を粉砕することや、とろみ水やゼリーを使用して飲むとよい。
②口腔ケア:食物が口の中に残留してしまっていることがある。
      そのまま放置すると誤嚥につながるため、食後にしっかり取り除く。
③胃食道逆流の防止:食後すぐに横になってしまうと胃から食物が上がってきやすい。
          食後1時間以上は座っていた方が良い。

<口腔、咽頭残留への対応>
食事中に喉がゴロゴロなることがありますが、これは食物を完全に飲み込むことが出来ておらず、喉に残留している状態です。咳払いや、追加で唾を飲み込むなど喉をすっきりさせてから、食事を再開する必要があります。

<食事中止のタイミング>
①たくさんむせる。
②飲み込む速度が遅くなる。
③SpO2が一気に3%以上低下し、呼吸状態が悪化する。
これだけではないが、大事なことは危ないと感じたら無理に食べさせないことです。

食事は人生の楽しみの1つですが、誤嚥や窒息などの危険を伴うものです。
これを機会に嚥下について関心を持って頂ければ幸いです。食事で気づいたことがあれば言語聴覚士までご相談下さい。

投稿者言語聴覚士 稲井宏則
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