NST便り2018.10月号
2019年06月10日

【NST活動とは〜当院での活動】
NSTはNutrition Support Teamの略で、病院内で患者さんの栄養を全病院的にサポートするための組織です。構成メンバーは病院によって違いますが、医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師、言語聴覚士、理学療法士、看護師、事務職員、などからなります。
具体的な活動内容は、血液検査結果などから低栄養と思われる入院患者さんを抽出し(スクリーニング)、食事がとれない患者さんがどのようにしたら栄養がとれるようになるのか、食事のとれない原因を考察し、解決方法を探り、より栄養のとれる方法を主治医に提案する、というものです。
当院では、週1回の回診、月1回のNST通信の発行、3か月に1回程度の勉強会の開催、の活動をしています。

【NSTの流れ】
〇 入院
   ↓
〇 血清アルブミン値(2.5 mg/dl以下)による栄養不良患者の抽出
   ↓
〇 主治医によるNST依頼
   ↓
〇 病棟でSGAによる栄養評価(シートの作成)
   ↓
〇 ODAによる栄養評価・栄養必要量の算定
   ↓
〇 NST回診・カンファレンス
   ↓
〇 主治医への提言(ラウンドレポート)
   ↓
〇 必要量摂取のめどが立つまでのNSTによるフォローアップ

まず、患者さんが入院をしたら入院時の血液検査結果(アルブミン値)から栄養不良の患者さんを抽出します。入院中に栄養状態が悪くなってきた患者さんも同様です。病棟のリンクナースは主治医に相談し、患者さんがNSTの対象になるかどうかを判断し、対象であれば主治医にNSTへの申し込みをしてもらいます。同時に、病棟の看護師により「SGA(後述)」で栄養評価を行います。NSTへの申し込みがなされた時点で、NSTは、患者様の情報の収集(病歴、病状、内服薬剤、点滴の内容など)を行い、「ODA(後述)」による栄養状態の把握、必要栄養量・水分量の算定を行います。当院では必要栄養量の算定はHarris-Benedictの式で必要栄養量の算定を行っています。
週1回、木曜日の回診日にNSTメンバーでNST回診を行い、患者さんの全身状態を拝見、患者さんともお話しして、食事が食べられない原因なども出来るだけ聞き取りを行います。回診後、収集した情報と回診結果を総合し、NSTとして患者さんの栄養摂取について改善出来る点があれば提言を行います。また、必要栄養量が摂取できるような見込みがつくまでは週1回の回診でフォローアップを行います。

【低栄養の評価法】
NST活動では、低栄養の評価法を大きくつぎの2つに分類します。
1) SGA (Subjective global assessment):主観的包括的栄養評価法
2) ODA (Objective data assessment):客観的データ栄養評価法

1.SGA
1982年にカナダのBakerらが提唱した栄養アセスメント法で、特定の測定器具を使わないのが特徴です。
問診として、体重減少量、食事の摂取状況、消化器症状の有無などと、視診・触診により、皮下脂肪量、筋肉量、浮腫の有無などをチェックし、あくまで評価者の「主観」に基づいて栄養状態を評価するというものです。
この評価法の長所は、費用と時間がかからないこと、簡便な割には、血液検査データなどの客観的評価法とよく相関すること、があげられます。

2.ODA
身体測定、血液検査結果などの客観的指標から栄養を評価する方法です。身体測定では、体重のほか、上腕三頭筋皮下脂肪厚、上腕周囲径といったNSTに独特な測定を行います。上腕三頭筋皮下脂肪厚は体脂肪の消耗の程度、上腕周囲径から計算した上腕筋周囲径は筋蛋白消耗の程度をみるものです。
血液検査で栄養状態を評価する項目としては、白血球数(総リンパ球数)、ヘモグロビン値、血清アルブミン値、総コレステロール値のほか、Rapid turnover proteinなどがあげられます。Rapid turnover proteinは半減期の短い蛋白質であり短期の栄養評価に用いられます。当院ではトランスフェリン、プレアルブミン(トランスサイレチン)が検査可能です。

当院NSTでは以上の活動を通じて今後も入院患者さんの栄養状態の改善に努めて参ります。

投稿者IBDセンター医師 折居史佳
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