NST便り2015.8月号
2019年05月26日

咀嚼訓練のためのゼリー!! 「プロセスリード」のご紹介

「プロセスリード」は2014年9月に,大塚製薬から発売された嚥下訓練のためのゼリーです.従来のゼリーと異なり,咀嚼するとペースト状になるような性質をもっています.つまり,口の中で食べ物の塊を作る練習ができる特別なゼリーです.
商品名の由来は,嚥下の仕組み「パルマーのプロセスモデル」という言葉からきているそうです.
今回は,この「プロセスモデル」についてご説明します.

嚥下という行為には2つのモデルが考えられています,具体的には,「のむ」と「食べる」ことの違いです.まず,「のむ」という行為は液体を飲みこむという事なのですが,食物(=液体)を口の中で取り込んで(口腔準備期),舌背が口蓋にそって後方へと移動します(口腔送り込み期).その後,嚥下反射が惹起され(咽頭期),食道入口部が開き,食塊が食道を通過します(食道期).これを4期連続モデルと言います.

従来,古典的には「嚥下」は液体をのむ時に分析された上記の4つの過程で行われていると考えられてきました.実際は液体を意識的に「のむ」過程によく当てはまり,嚥下という現象を考えるには分かりやすいものでした.
ところが,ヒトや動物が任意に固形物を飲み込んでいく過程ではこれとは異なる動作が連続して,また一部は重複して起こる事が報告され(1992,J.B. Palmar, Coordination of mastication & swallowing)、ただ「噛むこと」+「飲み込むこと」ではないと考えられる様になりました.これを「パルマーのプロセスモデル」と呼びます.


<パルマーのプロセスモデル>
まず固形物は舌により臼歯部に運ばれ,咀嚼により食べ物の塊と唾液が混ざり嚥下可能な大きさまで粉砕されます(processing).この際,舌は塊が臼歯部から落ちないよう前後方向の動きを軸に捻転します(stageⅠtransport).ふつうは咀嚼している間は口腔内に食べ物の塊があると思われるのですが,実は咀嚼中に,塊は少しずつ咽頭に流れ込んでいます.(stageⅡ transport) さらに咽頭に流れ込む際にも食べ物の塊が作られていきます.これは4期連続モデルとは異なり,咀嚼中に同時に口腔送り込み運動が開始され,嚥下反射惹起前に咽頭内で食べ物の塊がつくられていくということになります.このことを咀嚼嚥下といいます.
少し難かしい話ですが,咀嚼をして嚥下するということは,「丸呑み」とは違う動きをしているということです.

「プロセスリード」に話を戻します.
嚥下障害のある方にとっては,食事の形態がとても重要です.当院の食事形態では,まず嚥下訓練食(ゼリー)から開始し,「ミキサー食」⇒「きざみ・とろみ食」⇒「一口大食」⇒「軟菜食」⇒「常食」と難易度があがっていきます.「ミキサー食」は咀嚼せずに丸呑みできますが,「きざみ・とろみ食」になると咀嚼が少し必要になってきます.「きざみ・とろみ食」に食事形態を上げる前に咀嚼嚥下練習をするために作られたのが,「プロセスリード」なのです.

先日勉強会で「プロセスリード」について学んできたばかりなので,簡単にご紹介させて頂きました.興味のある方は嚥下動作を実験してみて下さい.味は抹茶と海老と柚子の3種類があるらしいです.

投稿者言語聴覚士 河崎大法
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