NST便り2014.12月号
2019年05月25日

<はちみつ中毒について>
みなさん,マッドハニー病という病気についてご存知でしょうか.海外産はちみつの摂取による中毒症状のことです.今回はこの件についてお話します.

☆マッドハニー病の症例
日本でも症例があり,「60歳代女性が東南アジアで購入したはちみつをお湯に溶かして飲んだところ,30分後に呼吸困難や視覚異常などの状態に陥り,数時間後には歩けなくなるなどの症状がでた.救急車で搬送されたが,致死的な症状はなく,嘔吐や下痢症状もなかった.」と報告されています.

☆毒性物質グラヤノトキシン
中毒症状の原因物質は『ツツジ科の植物に含まれる毒性物質グラヤノトキシン』を摂取したミツバチのはちみつによるとされています.グラヤノトキシンはジテルペン系の植物毒の一種で,ツツジ科の植物の主な生存地域は小アジア北部と言われています.
主な中毒症状として,めまい・過剰発汗・血圧低下・心拍の異常・嘔吐などが出現します.回復は早く,致命率は低いとされていますが,大量摂取の際は受診が必要となります.

≪中毒を引き起こす作用機序≫
①グラヤノトキシンが細胞上のナトリウムチャンネルに結合して,興奮と脱分極を継続させる.
     ↓
②筋小胞体から細胞内にカルシウムイオンが流出し,骨格筋や心筋の収縮が強まる.
     ↓
③不整脈などの期外収縮症状や迷走神経の刺激により麻痺症状なども現れる.

☆最後に...
日本産のはちみつに関しては問題ないとされており,はちみつ購入の際には原産地を確認することが重要です.主にトルコ周辺国原産のはちみつに注意する必要がありますが,念のため海外製のはちみつは控えた方が良いといわれているようです.

投稿者4階西病棟 看護師 大久保智子
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