2022年より救急科部長として就任しました。平山傑ですよろしくお願いします。
リレーエッセーを依頼されましたが、エッセーってなんだよ、とりあえず困ったな。
まあ、得意分野で勝負しよう!ということで、お勧めの漫画を紹介しようと思います。
今更、医者が「ブラックジャック」をお勧めするのかよっ
と思われるかもしれませんが、
医療が進んだ現代でも色褪せない、絶対的な医療漫画の原点。まずは最初に紹介したいと思います。
ブラックジャックは無免許医であるものの天才外科医、その技と人間としてのポリシーに心動かされる作品ですが、今回紹介したいのはそのライバルともいわれるドクターキリコです。
「死神の化身」という異名をとりながら、法律に触れないように安楽死を請け負う医者として登場します。
殺人狂の様な印象を持っている方もいるかもしれませんが、その実「生きようとする意思がなく、医術的にも手の施しようのない患者の救済措置としての安楽死」を信条としており、無暗矢鱈と希望する安楽死を施しているわけではありません。
救える命は救いたいし、それでも救えない命にそれなりの終着点を見つけてあげる。彼の信条は今の高齢者終末期医療の考え方の参考になるのではないかと思います。
目の前の病気だけを治療することに主眼を置くのではなく、その患者さんの将来を見据えた治療方針を提示する。
もしくは安楽死とまではいきませんが手の施しようもない将来が予測できた場合は治療を行わないことも提示することが、今の医療には必要と考えられないかと思います。
スピンオフ作品「Drキリコ 白い死神」(脚本:藤澤勇希、作画SANORIN)の作中で
「医者が救えるのはせいぜい命なんだよ、患者の人生までは救えない」
というセリフがあります。その通り我々医者は生命を維持することができるかもしないが、そのあとに続くであろう人生までは保証できません。
全力救命した結果、介護度が上がり施設や家に戻れず、意思疎通も取れず何のために生命活動をしているのか、という状態になることもしばしばです。
認知症、寝たきり、全介助、治療困難な担癌患者、家族不在で本人も意思決定能力がない等、色々な高齢者、終末期医療があります。
我々も家族・本人が納得できる終着点も見据えた医療の選択と我々も提示していく必要がありますが、皆さんもどういう終末を迎えることを望むか、考えておく必要があります。
なんでも助けるブラックジャックは憧れる医師像ではありますが、私はドクターキリコの様な考え方も必要と思うことがしばしばです(安楽死は絶対にダメですが)。これを機に一度読み返してみてはいかがでしょうか。