「What does the rex say?(レックスは何て鳴くんだ?)」 成田 光生
2022年11月28日

 ご存知のとおり、今年日本中を席巻した「きつねダンス」の原曲が「What does the fox say?(きつねは何て鳴くんだ?)」である。そこで問題、じゃあWhat does the rex say?(ティラノサウルス)レックスは何て鳴くんだ?

 恐竜について化石からはほとんど情報が得られないものの一つに「鳴き声」があり、このような場合には現世の動物から類推せざるを得ない。映画などでよく見かけるのはティラノサウルスが空に向かってガオーと「ほえる」光景であるが、実はこれはほぼ有り得ないと考えられている。つまりこの「ほえる」という行動には、原理的に声帯と横隔膜が必要なのである。が、現世の動物でこれらを持っているのは実は哺乳類だけで、恐竜の直系の子孫であると考えられている鳥類は、このような発声装置を持っていない。それでは鳥類はどのようにして鳴いたりさえずったりしているのかと言うと、管楽器のように、のどにある「鳴管(めいかん)」と呼ばれる管に空気を通して声を発しているのである。

 そこから類推すると恐竜にも鳴管があり、そこに空気を通して「鳴いて」いたのではないかと考えるのが自然である。そして鳴管も単純に体の大きさに比例していたはずと考えると、ティラノサウルスのような巨大恐竜の鳴管は相当太く、かなりの低音で「コーコー」あるいは「ゴーゴー」と「鳴いて」いたのではないかと推測されている。この点鳴管は残念ながら化石として残らないので、間接的ではあるが、鳴くからにはその声が仲間には聞こえていたはずだということに注目して、化石の頭骨に残っている「内耳」の構造からその機能を解析した研究がある。それによると、やはりティラノサウルスはかなりの低音も聞こえる能力を持っていたらしい。低音ほど遠くまで届くことを考えると、仲間同士の通信手段としても合理的である。

 大昔ティラノサウルスは人間(もちろんその時代には存在しないが)には聞こえないような超低音で「コーコー」と鳴いており、それを感じることのできた他の恐竜たちは震えあがっていたのかもしれない。

What does the rex say?

'コーコー、コッ、コッ、コゥ、コーコー、コッ、コッ、コゥ'

What does the rex say?

'コーコー、コッ、コッ、コゥ、コーコー、コッ、コッ、コゥ'

投稿者小児科 感染管理部長 成田 光生
カレンダー
カテゴリー