「医者の不養生」 清水 恒輔
2012年11月12日
医者の不養生という言葉があります。
幸いなことに私は入院もしたことはないし、手術も受けたこともございません。そして、まだまだ若い(と自分では思っている)ので、普段の生活や自分の健康のことなど全く考えてはいませんでした。

ところが、健康診断にて異常な数値がございました。それは尿酸値です。今まで見たどの患者様よりも高い数値でした。
尿酸とはビールや肉類に多く含まれていて、痛風の原因となります。痛風とは足の関節、特に親指の付け根に発作的に痛みが出るものです。大した痛みではないだろうと考えていましたが、発症した方々の話を聞くと「痛くてトイレにも這って行かなければならない」、「足に釘を何度も打ち込まれるくらいの激痛」と聞き恐ろしくなりました。

そこでまず、毎日のように家で飲んでいたビールを飲むのをやめました。しかし、下がりはしたもののまだ正常には戻りません。そこで、心を決めて薬をのむこととしました。薬を飲んでやっと正常値に戻りましたが、やめるとまた上昇してしまいます。自分の怠惰な生活を振り返り、食事量を制限し、週に3回程運動する日を設けることにしました。そうした生活をするうちに薬を飲まなくても尿酸値は正常となりました。しかも、それだけではなく体も引き締まり、普段の生活もいきいきとしてきた気がします。週に1.2度だけ飲むビールも非常に美味しく感じられます。

検査で異常があっても、自覚症状がないものも多数あります。尿酸値は痛風という痛み、高血圧や糖尿病といったものものでは自覚症状はないものの、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気の危険因子です。
病院や健診で異常を指摘された方は、症状を感じなくても大きな危険を背負っていることを自覚し、自己判断をせず必ず定期的に通院することをおすすめします。
(そういえば何ヶ月か前に数日間、走れないくらい足首が痛くなったことがありました。それは捻っただけだったのか、発作だったのか…)
投稿者眼科医師 清水 恒輔
「麻酔科」 工藤 雅響
2012年11月05日
もともと外傷センターでけがをした人を治療することを仕事にしていたのですが、この春から麻酔科で勉強をしています。きっかけは、とある地方の病院へ行った時、手術をしたくても『麻酔科医』がいないと手術が安心してできないという現実がありました。当院の麻酔科は部長を筆頭に軽快なフットワークを持ち懐の深いメンバーが集まっており、手術を必要とする患者様がいれば、昼夜問わずまさに24時間365日迅速適切な麻酔をかけてもらえます。しかし、こんな恵まれている環境ばかりではないと知った時から、麻酔科に興味を持っていました。この春から麻酔を勉強して思ったこと、それは、今までは手術をする医師(術者といいます)が一番患者様のことを考えていると思っていました。ところが、術者に負けないくらい熱い気持ちで患者様のことを考えている麻酔科医と手術場スタッフがいることを知りました。患者様の病気やけがについて把握し、どんな麻酔をかけたらいいかを検討する。手術前の緊張を取って安全に麻酔をかけるにはどうしたらいいか、手術中の血圧・脈拍・呼吸・体温の維持、覚醒をできるだけスムーズにするにはどうするか、術後の疼痛コントロールはどうするか、などなど考えていることは山ほどあります。患者様にとっては、麻酔科医や手術場スタッフとは手術場でしか会いません。緊張して入ってきて、眠たいまま病棟に戻るのであまり僕らのことを覚えてはいないかもしれませんが、入ってきて緑の服を着ていたらそれは『麻酔科医』です。味方を見つけたと安心してもらえたらうれしいです。
投稿者外傷センター医師 工藤 雅響
「中東いきましてん」 乾 貴博
2012年10月22日
1週間ほど中東に行きました
「アラブ首長国連邦」
サッカーのアジア予選でしか聞いたことのない国です
その中の首長国の一つ
ドバイってとこに行ってきました

みんなは夏休みだ、と言いますが断じて違います
スカイツリーより高いタワーに登ったり
ウォータースライダー乗ったり
ラクダに乗ったり
スキーしたり
・・・
いや、遊びに行ったんじゃないんですよ

セミナーに出てきたんです

いぬいは英語があまり得意じゃありません
そんな先生方もいるかな、なんて気持ちでいったんです

そうしたらディスカッションのセッションで愕然
中東とアフリカの先生方は英語ぺらぺらです

なんでや?
って聞いたら

「俺らは多民族国家だから、小さい頃からみんなで集まって意味わかる言語が英語しかねーんだよ」

だそうです。
逆に
「一つでたりる、おめーら、じゃぱにーずがうらやましいぜ」
と言われちゃいました

おれは、きみがうらやましいよ

ドバイ国際空港でトランジットと思われる
平たい顔族の皆さんを1週間ぶりにみたとき
すごい安心感
自分は極東の人なんやなぁと感じたのでした

ちょっとは英語がんばるか






このおまけ画像は中東のトイレです
なんとシャワーがついとるんです
TOTOの便器の横にシャワーがついてるとこもありました
教えてあげたい
ウォシュレットってのを・・・
(※この写真の便器はTOTO製ではありません)
投稿者外傷センター医師 乾 貴博
「ブラキストン線とコシヒカリ‐やっぱり地球は温暖化?」 成田 光生
2012年10月15日
 小樽生まれで札幌育ち,いわゆるちゃきちゃきの道産子である私が少年期を過ごした昭和30年から40年代,カブトムシやカマキリやミンミンゼミは昆虫図鑑の中でしか見られない生き物だった.当時(と言うか今でも?)生態系には津軽海峡にブラキストン線というのが有って,昆虫や植物の生育域を分けている.このため内地(道産子にとって,青森より南は「内地」です)であれば普通に見られる虫が北海道には住んでいないという,虫採り坊やにとっては非常に悲しい現実が有った.ところが今やカブトムシが北海道に自生しているのはほとんど周知の事実だし,カマキリも自生していることは間違いないらしい(何という偶然か,まさに本稿執筆中,私の自宅マンションの駐車場でコカマキリを発見!!).さらにこれは私の個人的経験でまだ公には認められていないと思うが,先日大倉山ジャンプ場の横を走っていたら,間違いなくミンミンゼミと思われるセミの鳴き声が聞こえたのである.7年間土中にいて,1週間程度しか地上に現われないセミが,たまたま木材などに付いて札幌までやって来て鳴いていた,とはちょっと考え難い.やっぱり自生?そうやって見渡すと,この頃は秋の夜長も以前の札幌では聞いたことのない虫の音が聞こえたりもする.今や虫の世界ではブラキストン線を越えて内地の虫たちがどんどん北海道上陸をはたしていることは間違いない.
 そしてコシヒカリ.コシヒカリと言えば新潟県・魚沼産だが,北海道のどこかの農業試験場でもコシヒカリが育てられていて,糖度などその成分を分析すると,実は北海道産コシヒカリが「以前の」魚沼産コシヒカリにどんどん近づいており,逆に「現在の」魚沼産コシヒカリは以前のものからだんだん離れつつあるのだそうだ.つまりブランド名はともかく成分だけから言うと,コシヒカリは魚沼産より北海道産のほうが‘美味く’なりつつあるようなのだ.もともとの道産米が品種改良など実力で美味くなってきたというのは定評があるが,コシヒカリについてはどうやら年間平均気温が問題で,作付けで重要な一定時期の平均気温が新潟も北海道もコンマ何度か上がってきて,現在の北海道が以前の新潟に近づいていて逆に新潟では気温が高すぎるようになってきたというのが成分変化の原因らしい.そのうち「北海道産コシヒカリ」が全国の市場で通用する日が来るかもしれない.
 昔は北海道にいなかった虫を観察できたり,北海道のコシヒカリが美味くなったり,現象だけ見れば嬉しいことのようではあるのだが,素直に喜んでいいことなのか,やっぱりちょっと心配だなあ,とも思ってしまうのである.私はサザエよりはツブ,カツオよりはサケの方が好きなのだが,そのうちツブやサケが樺太の方に押しやられ,北海道では近海もののサザエやカツオが出回るような日が来ることないよう,祈るばかりである.
投稿者小児科医長 成田 光生