「正常性バイアス」 西條 正二
2020年07月27日

 昨年、虫垂炎(いわゆる盲腸)になりました。

 ある夏の日、慌ただしい1日の勤務が終わり、帰宅途中の自転車上で、間欠的な右下腹部の違和感を自覚しました。運動不足なのに自転車を漕いだことによる腹斜筋筋膜痛と考え、むしろ腹筋を鍛えるべく下腹部に力を入れて、力強く自転車を漕ぎながら帰宅しました。

 しかし帰宅後も疼痛が遷延。『お腹が空いたんだろw』と思い、某乳酸菌飲料を一気飲みしてみましたが、全く改善の兆しなく、試しにHeel drop testをしてみると陽性に。"虫垂炎"の文字が頭を過ぎりました。

 しかし、昔、胃腸が丈夫で"コンポスト"の異名を誇った自分に限ってそれはないと正常性バイアスがかかり、食い過ぎと判断し、一眠り。

 それでも疼痛はさらに悪化傾向となり、悪寒も出現し始めたため、仕方がないので救急外来を受診しました。

 問診票を記載し、自分で自分を診察してみると、ブルンベルク徴候陽性で、面白いくらい、ばい〜んwと痛みが反跳します。おそらく自分のことでなければ流石に虫垂炎の診断に至ると思うのですが、いざ自分のこととなるとまたもや正常性バイアスが働き、『これは脱水による虚血性腸炎に違いない』と判断し、急速輸液を1000ml施行してみました。

 しかし、当然腹痛は改善するはずもなく、仰臥位保持不可能なレベルまで悪化してきたため、意を決して腹部造影CTを施行。根部に石灰化を伴う虫垂の腫脹と周囲の脂肪織濃度の上昇を認め、急性虫垂炎の診断に至りました。

 当直の外科の先生にコンサルテーションさせていただき、手術を希望させていただいたため、夜間にもかかわらず、虫垂切除術を施行していただき、無事退院することができました。

 思えば自転車を漕いでいる時点で通常ではあり得ない腹痛だったと思うのですが、自分のこととなると強力な正常性バイアスがかかり、診断の遅れにつながりました。

 この貴重な経験()を糧に、日々の診療に役立てて行きたいと思う今日この頃です。

投稿者プライマリーセンター医師 西條 正二