「この国の不寛容の果てに」 村上 智明
2020年03月09日

活字中毒の気がある。引っ越し作業中についつい古新聞に読み耽ってしまう、そういった類である。小説から漫画まで、あまりジャンルは問わない。

毎年年末に、1年間に読了した本を振り返りランキングを作っているが、昨年は"掃除婦のための手引書"が一位を独走していた。しかし最後に逆転したのが"この国の不寛容の果てに"である(ジャンルが全く違うので比較するのもなんだが)。これは現在判決公判待ちである相模原障害者施設殺傷事件をめぐって、雨宮処凛氏(北海道出身)が6人の識者と行った対話集である。この事件の加害者は事件後から公判中を通して、全くぶれることなく"障害者を排除する"という自分のとった行動がいかに正当であるかを主張している。この事件について多くのマスコミが、個人の問題という視点から記事を書いている。しかし柳田邦男氏はこの事件に関して"被告個人の特異性だけに着目するのではなく、歴史的・社会的な背景に踏み込まなくては意味がない"と朝日新聞にコメントしている。まさにこの本は個人ではなく、この加害者を生んだ社会の問題としてこの事件に取り組んでいる。医療の進歩は、永続的にケアを必要とする患者の増加を招いている。小児科領域でも"医療的ケア児""移行期医療"という言葉が飛び交う場が多くなってきた。そんな状況を考える上で必読の書である。

投稿者小児循環器部長 村上 智明