「『群れ」の話-イヌは群れる、ネコもトリもサカナも群れない-」 成田 光生
2019年12月16日

 そもそも「群れ」とは何だろう?生物学的に「群れ」は、幼体から成体までを含む複数の家系による共同生活体であり、そこには'リーダー'が存在する。この意味で「イヌ科の動物」は、「群れ」を作る。古来、'野犬の群れ''ハイエナの群れ'などとして「群れ」という表現がイヌ科の動物についてしばしば使われるのは偶然ではない。さらにこれと対極としての'一匹狼'という言葉が存在するのは、そもそもイヌ科の狼は「群れる動物である」ことを前提にしているからである。

 これに対し、「ネコ科」の動物は、「群れ」を作らない。よくサバンナなどで数頭のライオンが'群れて'いる映像を見るが、あれは1匹のオスを中心にして数匹のメス、そしてその子どもたちという'単独の家系'が集合している「ハーレム」と呼ばれる集団であり、「群れ」ではない。また'野良猫の群れ'という言葉も聞いたことがない。よく公園などに野良猫が集まっているのは、そこにいると餌があたる確率が高いという個々のネコの判断から集まっているだけであって、それぞれのネコは別行動である。

 小さなトリやサカナは種族を保存するのに都合が良いので本能的に「巨大な集団」を形成しているが、実は個々は別行動でありリーダーも存在せず、意外なことにこれは生物学的には「群れ」ではない。ちなみに岩波の国語辞典(第四版)を引いてみたら、「群れる」の項には「鳥が'群れて'飛ぶ」という例文が出ていた。文系ならこれで良いのかもしれないが、理系的には「鳥が'集団で'飛ぶ」が正しい。

 我々ヒトの集まりは...ただ生きるためだけに集まっている「大いなる個の集団」ではなく、あくまで共同生活体としての「群れ」であることを願いたいものである。

投稿者小児感染症部長 成田 光生
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