「ちょうどいい熱狂」 蘆田 知史
2019年09月27日

札幌でラグビーワールドカップが開催され、はじめて札幌ドームへ観戦に行った。

イングランド対トンガの対戦だった。

そもそもスポーツ観戦というものをしたことがなかったので、どのようなものかと思っていたのだが、開催日が近づくにつれ、段々と楽しみになってきた。2-3日前までは、その日に救急外来に患者さんがこないといいなーくらいの気持ちだったが、当日地下鉄に乗るときには、もしなにかあったら引っ越し中の藤谷先生にお願いしようと思うほど、ワクワクする気持ちがこみ上げてきた。地下鉄の駅をおりてドームまでの道は行列状態だった。歩いている人の中には、イングランドのファンというかイギリス人らしき人、イングランドのユニフォームを着ている人、顔に白地に赤十時のペインティングをしている若者、既にビールを飲みながら歩いている人などなど、気分が盛り上がってくる。試合開始2時間以上前に着席し、観客や練習風景などを眺めている。試合開始前には満員となり、歓声が上がり、スクリーンにスタメンの紹介があり、観客は興奮状態となる。キックオフの瞬間は割れんばかりの歓声となる。イングランドを応援する人がほとんどだ。

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私も高校時代は体重55kgの痩身で足が速く、ラグビー部に所属していた。14番ウイングで2試合に出場し、トライをし損なって函館ラサール高校ラグビー部の歴史を汚した。名誉のためにいうが、同級生にはほんとうに素晴らしい選手がいて、そこそこ強かった。しかし函館にはもっと強いチームがいっぱいあったのだ。そのようなわけで、私は弱いものの味方である。実力に劣るが一生懸命やっているトンガの選手を心からこっそり応援した。イングランドがボールを奪い、トライを重ねる度に胸が苦しくなるが周囲は大歓声である。後半、イングランドが4トライを重ねて勝利を決めた頃、観客の中の日本人から「トンガ!」という応援の声が上がりはじめた。最後の1分、トンガがなんとかワントライを返そうと、何度もボールを継ぎはじめたときには、トンガ!トンガ!の大歓声である。

結局試合はそのまま終わり、トンガの選手の中にはグラウンドに感謝の祈りを捧げる人があった。お互いにユニフォームを交換し、試合の熱狂は終わった。

日本人は昔から弱いものの味方(判官贔屓)の民族であった。そのことを思いだし、やさしい札幌の観客に心が和んだ。

そういえば病院のひともみんなやさしい気持ちで仕事してる。

連休明けの外来では、休み中に調子の悪かった患者さんが、「先生がいないと思って受診しなかった」といっていた。「我慢しないでいつでもきてね」といいながら、心の中でごめんなさい。

まったく素晴らしい1日だった。このチケットをとってくれたひとには一生かけて恩返しするつもりである。

投稿者:副院長・IBDセンター長 蘆田 知史
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