「思い込み」 東 直樹
2019年08月05日

 通常、患者さんとの説明で、「いった」「いわない」とかで、誤解されていることが少なくない。以前勤めていた市立M病院のことである。

 近所の婦人会での井戸端会議のことである。

「最近、胸が苦しいの?。」と40歳代の女性。

「それは、心臓が悪いのでないの?。」

「私、いい医者を知っているわ」

「誰?」

「市立M病院の循環器内科のM先生。」

「それじゃ、いってみるわ。」

 一年後、再び近所の婦人会での井戸端会議。

M先生にかかっているのだけど、よくならないの?心臓は悪くないと言うの。」

「う・・・ん?。」

「それ、胃が原因でないの。」

「それじゃ、検査に行ってみるわ。」

 数日後、検診の結果をもって、市立M病院消化器内科の私の外来を受診した。検診のバリウム検査では、胃噴門部の進行胃がんであった。直ちに、入院し、他の検査で転移はなく、外科で無事手術も終了し、事なきを得た。

 後日、循環器内科のM先生のカルテを拝見する機会を得た。カルテ上初診時、様々な検査で、循環器上異常はなく、「心臓が原因でない、消化管検査を」と、再三再四、胃カメラを勧めたが、「わたしは心臓が悪いので、心臓を診てほしいので、必要はない。」と拒否していたようだ。したがって、カルテには「心臓神経症」と記載されて、一年間通院していた。

 外野はM先生が誤診をしたと揶揄するものがいたが・・・?

 難しい症例である。

投稿者消化器内科部長 東 直樹
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