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「収斂(しゅうれん)進化」 成田 光生

投稿日時:2017年3月13日 08:18 月曜日

皆さんはエビとカニとどちらが進化した生物であるか,ご存知だろうか.そんなこと知らなくても寿司は美味い,と言わずに少し考えてみてください.(この間10秒)

ずばり,エビが進化したのがカニである.すなわち中生代白亜紀(約1億年前)にはすでに今のエビと完全に見分けのつかないエビが出現しているが,カニの出現は新生代第三期(約6000万年前)頃である.カニをひっくり返して見ると腹の部分に,‘褌(ふんどし)’と呼ばれる蛇腹状の構造がある.これがまさにエビの尾に相当する部分で,すなわち水中を泳いでいたエビが,何千万年もかけて尾を腹の部分の裏側にしまい込むように進化して,水の底を歩けるようになったものが,カニである.

なぜそんな面倒くさいことをしたのか?それは(カニに聞いてみなければ分からないが)たぶん,外敵から身を守るためである.単純に考えて,水中に全身をさらして泳いでいるよりは,底を這って岩陰に隠れて身を守る方がよほど効果的である.それが証拠に,タラバやタカアシのように巨大なカニは存在するが,巨大なエビは存在しない.大きくなったとしてもせいぜいイセエビ程度であるが,彼らは水中を泳ぐのではなく,まさに岩陰に隠れて生活している.ではなぜ横に歩くのか?これも(カニに聞いてみなければ分からないが)たぶん,その方が狭い隙間にもぐりやすいからである.ちなみにカニの正式な分類は,節足(せっそく)動物門(どうぶつもん),甲殻(こうかく)亜門(あもん),十(じゅっ)脚目(きゃくもく)(エビ目),短尾(たんび)下目(かもく)(カニ下目)となっており,やはりエビからカニが分かれたことを示している.

それでは,こちらは結構有名な話であるが,毛ガニやズワイガニと,タラバガニや花咲ガニはどこかが微妙に違うということはご存知だろうか.そんなこと知らなくても寿司は美味い,と言わずに少し考えてみてください.(この間10秒)

ずばり,毛ガニやズワイガニは正真正銘の‘カニ’であるが,タラバガニや花咲ガニは,‘カニ’という名前は付いているが実は節足(せっそく)動物門(どうぶつもん),甲殻(こうかく)亜門(あもん),十(じゅっ)脚目(きゃくもく)(エビ目)-ここまでは‘カニ’と同じだが-その次が異尾(いび)下目(かもく)(ヤドカリ下目)に属する‘ヤドカリ’なのである.ここでヤドカリがカニと最も大きく違うところは,ヤドカリはその名のとおり貝の殻を借りなければ生きていけないのと,「縦に歩く」ことである.つまりヤドカリは,そこら辺に普通に落ちている貝の殻以上には大きくなれない-それじゃあ,つまらない-ということで,脱皮によりいくらでも大きくなれる殻を自分で作り,岩陰に隠れやすいように横歩きもできるようになったのが,タラバガニや花咲ガニなのである.そこで気づいてみると,その姿は毛ガニやズワイガニとそっくり同じものであった,というのは決して偶然ではない.

このように,もともとは別の生き物が環境に適応して生き残るために進化した結果全く同じような形態にたどり着いたことを「収斂進化」と呼ぶ.他に収斂進化の代表例としては,T‐レックスとゴジラが挙げられる(なわけないだろ).ちなみにタラバガニは,外見は8本脚であるが,腹の中にあと2本の脚があり(だから十(じゅっ)脚目(きゃくもく)),横だけでなく縦にも歩くことができるなど,エビやヤドカリから進化してきた名残をちゃんと持っている.

ふーん,でも結局,「そんなこと知らなくても寿司は美味い」...ちゃん,チャン.

投稿者:小児感染症部長 成田 光生