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私の胃カメラ事始め  佐藤 康永

投稿日時:2018年1月29日 11: 月曜日

私が初めて胃カメラの検査を見学したのは,平成2年医学部5年生のときの臨床実習のときでした.モニターに映し出される綺麗な消化管の画像に感動し,亡父が消化器外科医であったことと写真好きということが影響したのか,平成4年6月母校の大学病院消化器内科に入局しました.

実際に,胃カメラを始めるようになったのは,初期研修期間が間もなく終わろうとする
平成5年12月のことでした.当然のことながら最初から上手に検査などを行えるはずは
なく,まずは内視鏡検査練習用消化管モデルを使い,先輩方より内視鏡検査の手ほどきを受け日中の仕事終了後に内視鏡室で練習するという日々を送っていました.

<内視鏡検査練習用消化管モデル>
箱の中に胃が入っているということで研修医の間では『箱胃(はこい)』と呼んでいました.


(高研社ホームページより引用,一部改変)

それから,約1ケ月後・・・初めての胃カメラを行うことになりました.患者さんによっては『内視鏡は苦しい』と言われて敬遠されるような方もいる訳ですから,当時研修していた大学病院では,(胃カメラを)患者さんに行う前に研修医同士がお互い検査を行い,その苦しさを共有するといったことが行われていました.私のpartnerは,大学入学時から同期だったX先生であり,まずは私が被験者(内視鏡を受ける立場)…胃カメラは通常であれば数分で終わるのが普通ですが,1時間程度かかり当日は空気でおなかが一杯になり食事もノドを通らなかったのを今でもはっきり覚えています.翌週,私が検査する側となり被験者はX 先生でした.初めて胃カメラを手にして過緊張状態,『箱胃』で充分練習したはずなのに『箱胃』では生じることのない蠕動を初めて目の当たりにして内視鏡が思うように進められない…検査が終わった頃には,やはり時計の長針が一周していました.

早いものであれから24年.現在では週に15件程度の胃カメラを行わせて頂いています.
未熟であった私をスキルアップさせて頂いた各病院のスタッフの方々には心より感謝申し上げます.


投稿者:消化器内科医長 佐藤 康永

羽毛の進化-鳥は恐竜である・前編-

投稿日時:2018年1月22日 08:15 月曜日

学者ならずともちょっとした古生物ファンであれば,いまどき「鳥は恐竜である」と言っても‘そんなの常識でしょ’であるが,一般の方々にはまだまだ耳新しい話かもしれない.そう,間違いなく鳥は恐竜と同類の生き物であり,さらにその恐竜の中でも「獣脚類(じゅうきゃくるい)」と言って,かの有名な‘暴君王’ティラノサウルスと非常に近い仲間から進化してきたのである.ここで生物の世界においては,鳥類を代表して「スズメ」と呼ぶことがある.一方,草食竜の代表として良く知られている恐竜にトリケラトプスがあるが,これは「装飾頭類(そうしょくとうるい)」と言って,実は進化論的には獣脚類とは結構離れている.生物としては,ティラノサウルスとトリケラトプスよりも,ティラノサウルスとスズメのほうが,よほど近いのである.生き物は,決して外観や大きさで判断してはならない.

 さてこれも古生物ファンにはよく知られていることであるが,一部の恐竜には,羽毛が生えていた(ティラノサウルスに羽毛が生えていたかどうかについては直接的証拠は無く,議論のあるところである).この羽毛の役割は,最初はたぶん飛ぶことではなく,保温だった.恐竜がどの程度体温を保持できていたのかはほとんど分かっていないが,少なくとも恐竜はそれ自体あるいは卵を保温する必要があった.そこで保温性の高い羽毛が役に立ったのである.この羽毛にも興味深い進化が見られるのだが,この先は次の機会に譲る.

投稿者:小児感染症部長 成田 光生

「白髪」 倉田 佳明

投稿日時:2018年1月15日 09:02 月曜日

私は学生時代から白髪がありました。いわゆる若白髪です。たいして多くもなかったので全く気にしていなかったのですが、20代後半、30代になるにつれ、徐々に白髪は増えていきました。特に横の部分の白髪が多く、目立つようになってきました。

35歳頃だったでしょうか。さすがに気になったので、試しに白髪染めをしてみました。思ったよりも自然な感じで違和感なく、自分としては気に入りました。周りは気付かなかったのか、それとも気付いていたけども気を遣っていたのか、何も言われなかったので、とぼけて染め続けました。

見た目は確かに良いのですが、髪を切る度に染めるのは結構面倒ですし、頭皮に悪い気もします。しかし一旦染めると、やめるタイミングは難しいのです。髪を切った時に染めないと、見た目変ですし(自分で変だと思っているだけなのでしょうが)。

そんな状態で数年過ごしたある時、妻の「いい加減やめたら?」で、染めるのをやめました。最初こそ違和感がありましたがすぐに慣れ、今では「ロマンスグレー(古っ)」を自負して堂々としています。

が、しかし… 今度は「子供のことを考えて、染めた方がいいんじゃない?」と妻が言い始めました。おじいちゃんみたいだと、子供が馬鹿にされるかも知れない、と。やめろと言ったり、染めろと言ったり、何だかなぁと思いますが、妻はともかく、子供に言われたら、また染めてしまうかも知れません。会った時に黒髪になっていても、髪のことには触れずに、そっとしておいて下さい。

投稿者:外傷センター長 倉田 佳明

「おひとり様」 小笠原 卓

投稿日時:2018年1月9日 09:01 火曜日

僕は一人で食事をすることが苦手である。おひとり様で外食に行こうとすると、たとえ好きな物を食べていても、何となく寂しくなってしまう。喫茶店で小一時間、時間を潰すだけで一苦労だ。コーヒーを頼みゆっくり楽しめればよいのに、周りの視線が気になるというか、「あの人“ぼっち”みたい」と言われているような気がして楽しめなくなる。ついつい時間をしきりに気にするような芝居をしたり、「あいつ遅いなぁ」なんて(待ち人もいないのに)つぶやいてしまったりする。
 しかしその一方で、一人で気ままに好きな食事やお酒を楽しみたいという強い欲求もある。集団で食事をする時は、往々にして自分の望まない店に連れられて行くことがある。こういうのは精神上よくない。年齢も40に近づいてきたことだし、そろそろ「おひとり様でも外食を楽しめるようになりたい」と、ふと思い始めた次第である。
 というわけで、まずは自分がどのレベルの「おひとり様」に耐えられるのかを客観的に把握する必要があると判断し、自分の中で“ぼっちレベル”を設定した。これは自分の個人体験に基づいた独断と偏見による評価方法であり、一般の人々が感じる「お一人様」を想定したものではないのであしからず。“ぼっちレベル”は以下のように5段階に分けられる。
 
 “ぼっちレベル1”:ラーメン屋に一人で入る事ができる。
 “ぼっちレベル2”:喫茶店やパスタなどの比較的おしゃれな店に一人で入る事ができる。
 “ぼっちレベル3”:焼き肉店、鍋物の店に一人で入る事ができる。
 “ぼっちレベル4”:飲み屋やカップルの多い店に一人で入る事ができる。
 “ぼっちレベル5”:あらゆる店に一人で入り、楽しめる。

 ラーメン屋はこの評価法のとっかかりである。週末コツコツと「1人ラーメン」の場数をこなしたため、ぼっちレベル1は既に到達済みだ。ただ悲しいのは「知らない店に入りづらい性格のため、店がなかなか増えない」ことだけだ。大丈夫、今後どんどん増えて行くだろう。多分。喫茶店は、現在かなりソワソワするものの、大丈夫、これも入れる。クリアだ。焼き肉は…昔、肉に飢えていた20代は食欲に負けて一人でも入れたが、今はダメだ。「1人焼き肉」は今の自分には厳然たる壁であり、他人の目を気にせずにはいられない。しばらく「1人焼き肉」はしていない。
 …とすると、現在の自分はレベル2止まりか。せめて3は欲しいところ。
 レベル4、5は実は現在の自分の理想を記載したものである。カップルの目も気にせず、自分の好きなお酒を時には飲みたいという願望である。レベル5は今の自分にとっては、神レベルである。レベル4との違いは、「一人で楽しめる」という事。レベル5に到達している人は自分の人生を十分に満喫し、自分の内面の自由を豊かに発揮できる人だと思う。どうすればなれますかねぇ?

 自分の中で“他人と過ごしたい欲求”と“自分の好きなように過ごしたい欲求”の間で相剋する心理状態があることを見つけたため、日常の場面に照らし合わせて、少しだけ記述してみた。

投稿者:小児科医師 小笠原 卓

「言葉探し」 杉浦 千尋

投稿日時:2017年12月25日 09:25 月曜日

1998年に公開されたスピルバーグ監督の「プライベート・ライアン(邦題)」という映画がある。1944年のノルマンディー上陸作戦に端を発する物語である。ある事情によりミラー大尉にライアン一等兵の救出命令が出された。一兵卒の救出に命を賭す意義に疑問を感じつつも、多くの犠牲を払いライアンのもとに辿り着いたミラー分隊。だが、ライアンは他の仲間を置いて自分だけ去るわけにはいかないと後方への移動を拒否する。仕方なくライアンとともに前線に残ることになった分隊だが、そこにドイツ軍の戦車が…

“Earn this.”

これがミラー大尉の最後の言葉そしてライアンに対する命令だった。
その時ライアン一等兵は応える言葉を持っていなかった。

それから何十年かたち、家族、孫たちに囲まれて、初めてミラー大尉の墓前にやって来たライアンが口にした言葉が

“I only hope, in your eyes at least, I earned what you did for me.” 

だった。

この3時間近い映画も、この”Earn”という一語に集約されるのではないか。
でも、しっくりとくる日本語が見当たらない。

“Earn”といえば、私の中では、受験英語風に「(働いて)金を稼ぐ、儲ける、生計を立てる」とか「(名声、評価を)得る」というような、金銭や名声絡みの何か少し生々しいニュアンスを持っていたからである。
ストーリーの流れからの意味としては理解できていても、自分にとっては何か場違いな感じのする言葉として、どうしても違和感を拭いきれなかった。

それでは訳本ではどうなっているか?と確認してみたところ、“Earn this”は「それに見合う、ひとかどの男になれ」という訳になっていた。だが、これではどうもしっくりこない。最後の言葉にしては冗長過ぎる感が拭えない。
そして“I only hope …”に関しても、「それだけのことに見合う、ひとかどの男だったろうか?」と訳されており、これまたどうもしっくりこない。
Earnしろと命令され、その使命に応えたか?という文脈での意味としては成立するのだが、最後の力をふりしぼって発する簡潔さが無いのだ。

自分であれば、“I only hope … ”に関しては「あなた(方)の恩に報いることができただろうか…」とでも訳して落ち着けるかなとも思うが、”Earn this”の2語にふさわしい、しっくりした日本語がなかなか見つからない。
「無駄にするな」では少し弱い。自分が望まなかったとしても、それを受け入れざるを得なかった多くの仲間たちの運命を背負って生きろという積極性に欠ける。

救出の原因となったライアンの兄弟の犠牲、ミラー大尉達の犠牲、さらに、その時の状況を形成したすべての犠牲からEarnしろという、ライアンだけではなく、すべての生き延びた者たちへの重層的なメッセージとして解釈できなくもない。

あと1つで完成するジグソーパズルの、最後の1ピースが見つからない様なもどかしさ。
自分だったらそんな状況で、どんな言葉を選ぶのだろうか? と自問しつつ、まだ言葉探しは当分続きそうだ。

投稿者:歯科口腔外科部長 杉浦 千尋